キュート先生の『肺癌勉強会』

肺癌に関連するニュースや研究結果、日常臨床の実際などわかりやすく紹介

【書評・執筆】看護技術~コロナ禍のがん診療の現場で何が起きているか~

肺癌, 肺癌勉強会, 新型コロナウイルス, COVID-19, 看護技術, メジカルフレンド

執筆しました

メジカルフレンド社の『看護技術 2020年12月号』「コロナ禍のがん診療の現場で何が起きているか」の題名で執筆いたしました。

肺癌, 肺癌勉強会, 新型コロナウイルス, COVID-19, 看護技術, メジカルフレンド

内容は詳しくお伝えできませんが・・・

COVID-19流行下でがん診療の現場で起きている問題について、患者さんの立場から

 ①受診機会の減少

 ②医療機関での面会制限

についての話題と医療者の立場から

 ①検査/治療

 ②院内感染対策や自身の健康

についてまとめさせて頂きました。

ぜひ看護職の方々やがん診療に携わる医療従事者、がん患者さんやそのご家族にも読んで頂きたい内容に仕上がっています。

【CROWN】未治療ALK陽性肺がんに対するロルラチニブは良好な無増悪生存と頭蓋内病変への圧倒的な効果

肺癌, 肺癌勉強会, ALK, CROWN, ロルラチニブ, クリゾチニブ, ローブレナ

『First-Line Lorlatinib or Crizotinib in Advanced ALK-Positive Lung Cancer』(NEJM 202;383:2018)より

まとめ

  • 未治療ALK陽性非小細胞肺がんでロルラチニブはクリゾチニブに比べ良好な無増悪生存期間と高い頭蓋内病変への効果を示した。

要約

〇ALKに対する第3世代阻害剤であるロルラチニブは既治療ALK陽性非小細胞肺がんに抗腫瘍活性を示す。

〇進行ALK陽性非小細胞肺がんの1次治療としてクリゾチニブと比較しロルラチニブの効果は分かっていない。

〇未治療で転移性進行ALK陽性非小細胞肺がん296人を対象に、ロルラチニブとクリゾチニブを比較するグローバルランダム化第3相試験を実施した。

〇主要評価項目は盲検化し独立した中央評価委員会評価での無増悪生存期間。

〇副次評価項目には奏効率と頭蓋内病変の奏効率が含まれた。

〇177例中133例(75%)の予想された病勢進行または死亡のイベントが発生した後、有効性の中間分析が計画された。

無増悪生存期間は

 -ロルラチニブ群 未到達(95%CI:未到達-未到達)

 -クリゾチニブ群 9.3カ月(95%CI:7.6-11.1カ月)

であり、12ヶ月時点で病勢進行なしに生存していた症例の割合は

 -ロルラチニブ群 78%(95%CI:70-84)

 -クリゾチニブ群 39%(95%CI:30-48)

だった(病勢進行/死亡のハザード比 0.28、95%CI:0.19-0.41、p<0.001)。

〇奏効率は

 -ロルラチニブ群 76%(95%CI:68-83)

 -クリゾチニブ群 58%(95%CI:49-66)

で、測定可能な脳転移を有する症例はロルラチニブ群に26%、クリゾチニブ群に27%含まれており、そのうち

 -ロルラチニブ群 82%(95%CI:57-96)

 -クリゾチニブ群 23%(95%CI、5-54)

において頭蓋内での奏功を示した。

〇ロルラチニブが投与された頭蓋内病変のある17例のうち12例(71%)が頭蓋内で完全奏功を認めた。

〇ロルラチニブの一般的な有害事象は高脂血症、浮腫、体重増加、末梢神経障害、認知機能への影響だった。

〇ロルラチニブはクリゾチニブよりもグレード3/4の有害事象(主に脂質レベルの変化)と関連していた(72% vs 56%)。

〇有害事象による治療の中止はロルラチニブ群で7%、クリゾチニブ群で9%に起こった。

キュート先生の視点

Alice T Shaw先生からのNEJM『CROWN試験』の報告で、昨日アップされました。

ALK陽性肺がんの臨床試験では、フロンティアであったはずのクリゾチニブがボコボコにされている印象がありますが、本試験でも圧倒的なPFS、Cranial progressionの差を見せつけてくれています。感動・・・。

特に論文中の頭蓋内病変の奏功に関しては、ロルラチニブ群でほぼ100%(増悪なし)で2年半プラトーになっていて感動・・・(2回目)。

先日、改訂されました『肺癌診療ガイドライン2020年度版』でのALK陽性非小細胞肺がんの1次治療ではアレクチニブ(推奨度 1A)、クリゾチニブ(推奨度 2A)、セリチニブ(推奨度 2B)となっており、ロルラチニブは2次治療以降での推奨となっています。

肺癌, 肺癌勉強会, ALK, CROWN, ロルラチニブ, クリゾチニブ, ローブレナ

改訂されてまだ1週間・・・ではありますが、本試験の結果をもってどうなるかが注目されます。

【書評】肺がん診療 虎の巻-WJOG肺がんグループのプラクティス-

肺癌, 肺癌勉強会, 肺癌診療虎の巻, クリニコ出版, WJOG

書評 『肺癌診療 虎の巻』

西日本がん研究機構WJOGから肺がん診療における実際の臨床でのプラクティス本として出版されました。

監修者である山本信之先生をはじめ、編集者・執筆者を見て頂ければわかる通り、現在の日本の肺がん診療を牽引する先生方が数多く名を連ねており、見た瞬間に予約購入しました。

一般的な肺がん診療の流れ、フォローアップ、具体的な治療法のまとめ、よく認められる合併症対策などが細部にわたって記載されております。

特に支持療法や副作用・合併症対策に多くのページを割かれており、肺がん患者さんと共に戦うのにあたり、心強い1冊になること間違いなしです。

肺がん診療に携わる医療者は必ず携行されたい本書です。

『肺癌診療ガイドライン』改訂

肺癌, 肺癌勉強会, 肺癌診療ガイドライン

『肺癌診療ガイドライン 2020年版 悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む』改訂

11月13日に肺癌学会にあわせて『肺癌診療ガイドライン』が改訂されました。

主な改訂ポイントとしましては

■新しいドライバー変異に「MET」が追加

■「ニボルマブ+イピリムマブ併用療法」の「IOIO」が追加

■ALK変異陽性肺がんの2次治療に「ブリガチニブ」

■ROS-1変異陽性肺がんの治療に「エヌトレクチニブ」

 が挙げられます。

今年は2年ごとの冊子版の作成もありますので、しばらくお待ちください。

肺がん領域は年々進歩しており、日々勉強しても追いつくのがやっとこさの状況です。

これからも多くの肺がん患者さんに最良の治療を提供するために日々努力を続けていきます。

知らなかった!L858R変異は独立した脳転移のリスク因子

肺癌, 肺癌勉強会, オシメルチニブ, CNS, 脳転移

『Survival outcomes and symptomatic central nervous system (CNS) metastasis in EGFR-mutant advanced non-small cell lung cancer without baseline CNS metastasis: Osimertinib vs. first-generation EGFR tyrosine kinase inhibitors』(Lung Cancer 2020;150:178)より

まとめ

  • EGFR L858R遺伝子変異は独立した脳転移のリスク因子

要約

〇EGFRチロシンキナーゼで治療を受けているEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん症例において、中枢神経系転移は頻度の高い合併症である。

〇しかしながらEGFR-TKI治療中の中枢神経系転移の発生やそのリスク因子については報告が少ない。

〇第1,3世代EGFR-TKIで治療を受けている中枢神経系転移のないEGFR陽性非小細胞肺がん症例を集積した。

〇全生存や、累積中枢神経系転移の発生とそのリスク因子について評価した。

〇813例を登録し、その中で562例がゲフィチニブ、106例がエルロチニブ、32例がオシメルチニブで1次治療を受けており、113例が2次治療でオシメルチニブで治療されていた。

〇フォローアップ期間中央値18.1カ月で、全生存期間中央値45.5カ月、38例が新たに中枢神経系転移を認めた。

〇オシメルチニブは第1世代EGFR-TKIよりも中枢神経系転移を起こしにくい傾向(p=0.059)にあった。

〇しかしながら、症候性の中枢神経系転移の累積発生率のカプランマイヤー曲線は、第1,3世代に関係なく、約3年後にプラトーになる傾向があり、3年を超えると2群間は似通っていた。

L858R変異のある症例はエクソン19deletions変異の症例よりも中枢神経系転移を発生しやすい高リスクであった(p=0.001)。

キュート先生の視点

EGFR遺伝子変異陽性肺がんであっても脳転移の有無は予後規定因子として重要です。

いくらEGFR-TKIの効果が高いとはいえ、脳転移はない、あるいは起こらないことに越したことはありません。

エクソン19欠失変異やエクソン21 L858R変異に関してのサブ解析は最近多くなされており、それぞれの特徴が分かってきているところですが、脳転移のしやすさに関しては存じ上げませんでした。

少し頭部病変の評価のタイミングを早めて実臨床に活かしていきたいと思います。