『Efficacy and Safety of Pembrolizumab Plus Docetaxel vs Docetaxel Alone in Patients With Previously Treated Advanced Non–Small Cell Lung Cancer The PROLUNG Phase 2 Randomized Clinical Trial』(JAMA Oncol. doi:10.1001/jamaoncol.2020.0409 Published online April 9, 2020)より
まとめ
- プラチナ併用化学療法で1次治療後に病勢進行の非小細胞肺癌78例
- ぺムブロリズマブ+ドセタキセル群とドセタキセル単剤群で比較した第2相試験
- 主要評価項目は奏効率ORR 42.5% (ドセタキセル単剤群 15.8%)
- 無増悪生存期間PFS 9.5カ月(ドセタキセル単剤群 3.9カ月)
要約
〇進行肺癌治療において、社会経済的理由で1次治療で免疫資料が受けられない症例がいる。
〇プラチナ併用化学療法後に2次治療として免疫治療+化学療法を行うベネフィットを示した報告はない。
〇1次治療でプラチナ併用化学療法を行い、病勢進行した進行非小細胞肺癌78例を登録し、
-ぺムブロリズマブ+ドセタキセル群 40例
-ドセタキセル単剤群 38例
に振り分けた。
〇ドセタキセル(75mg/m2、DAY1)、ぺムブロリズマブ(200mg、DAY8)で3週間毎6サイクル投与し、その後は維持療法としてぺムブロリズマブを継続した。
〇主要評価項目は奏効率ORR、副次評価項目は無増悪生存期間PFS、全生存期間OS、安全性とした。
〇奏効率ORR:併用群 42.5% vs 単剤群 15.8%(OR 3.94、95%CI:1.34-11.54、P=0.01)
〇無増悪生存期間PFS:併用群 9.5カ月 vs 単剤群 3.9カ月(HR 0.24、95%CI:0.13-0.46、P<0.001)
〇全生存期間OSのデータはフォローアップ期間が短くimmatureであり、今後の解析が待たれる。
〇グレード1/2の肺臓炎は併用群 23% vs 単剤群 5%であったがグレード3以上は認められず、いずれの症例も良好な経過だった。
キュート先生の視点
78例と少ない症例での解析ではあるが、免疫チェックポイント阻害薬で未治療な2次治療以降の状況においてドセタキセルに抗PD-1抗体であるぺムブロリズマブを併用するとドセタキセル単剤に比較して圧倒的な効果を認めた。
両群とも組織型は80%以上Adenocarcinomaであり、PD-L1発現率もむしろドセタキセル群の方が高発現の割合が多いにもかかわらず、圧倒的にぺムブロリズマブ+ドセタキセル群の方がORR、PFSともに勝っている。これは正直わたくし自身も驚きであった。
比較すべきは勿論、2次治療でぺムブロリズマブ単剤とドセタキセル単剤を比較した『KEYNOTE010試験』(Lancet 2016;387:1540)であるが、この試験でのぺムブロリズマブ単剤群のPFSは2mg/kg群:3.9か月、10mg/kg群:4.0か月なのでドセタキセルと併用した効果がいかに高いかが伺える。
気になるのは有害事象であり、ドセタキセルも比較的薬剤性間質性肺炎に注意が必要な抗癌剤であるが、ぺムブロリズマブと併用した際にグレード1/2程度の肺臓炎は23%で観察されているのでそこは気をつけたい。もちろん甲状腺機能異常も指摘されているので併せて注意されたい。
患者さんの立場からはDAY1,8で来院し、点滴での抗癌剤の投与を受けなければならないことだけは説明が必要となる。
本試験で使用されているぺムブロリズマブはドセタキセルと併用する薬剤としては認可されていないので本邦の治療では使用できかねるが、今後、本試験を含めてこのレジメンが使用可能になる際には強力な武器となりうる。論文中にも免疫治療と化学療法のシナジー的な分子メカニズムは推測されるとの記載があるが、全てを解明することはできず詳細は今後の研究課題となるであろう。