『Comparison of Carboplatin Plus Pemetrexed Followed by Maintenance Pemetrexed With Docetaxel Monotherapy in Elderly Patients With Advanced Nonsquamous Non–Small Cell Lung Cancer A Phase 3 Randomized Clinical Trial』(JAMA Oncol. 2020;6(5):e196828. doi:10.1001/jamaoncol.2019.6828 Published online March 12, 2020.より)
まとめ
- 未治療、75歳以上の非小細胞肺癌、433例
- CBDCA+PEM→PEM維持 vs DTX単剤の比較第3相試験
- 主要評価項目はOSで18.7カ月(CBDCA+PEM→PEM維持群) vs 15.5カ月(DTX単剤群)
- 有害事象もCBDCA+PEM→PEM維持群の方が頻度が少ない傾向
要約
〇進行非小細胞肺癌に対する臨床試験において高齢者に特化した報告は限られている。
〇非扁平、非小細胞肺癌症例で75歳以上の高齢者に絞ってドセタキセル単剤治療に比べカルボプラチン+ペメトレキセド併用療法の非劣性を示す試験を行った。
〇本試験はオープンラベル、多施設での非劣性第3相試験。
〇日本の79施設から75歳以上のPS0/1の症例で化学療法未治療の進行非扁平非小細胞肺癌症例433例が集積された。
〇症例は無作為に
-カルボプラチン(AUC5)+ペメトレキセド(500mg/m2)、3週毎、4コース→ペメトレキセド(同量)維持、以後3週毎
-ドセタキセル(60mg/m2)、3週毎
の2群に振り分けられた。
〇主要評価項目の全生存期間OS 18.7カ月 vs 15.5カ月(HR 0.850、非劣性に対するP value 0.003)
〇主な有害事象はCBDCA+PEM→PEM維持群とDTX単剤群を比較し
白血球減少:28.0% vs 68.7%
好中球減少:46.3% vs 86.0%
グレード3/4発熱性好中球減少症:4.2% vs 17.8%
血小板減少:25.7% vs 1.4%
貧血:29.4% vs 1.9%
となっていた。
キュート先生の視点
そもそも『肺癌診療ガイドライン』にも年齢で治療選択肢を分けることに関して記述があるが、1次治療において65歳で年齢を分けて治療効果に差は認めず暦年齢よりも日常生活自立度(ADL)の方が予後に関係していた(JCO 2005;23:6865)との報告があり、また80歳以上の年齢でもPS0-1の場合には80歳以下の症例と比較し、化学療法での生存期間に有意差がなく、毒性も差を認めなかった(JTO 2007;2:494)との報告もある。このことから本邦のガイドラインではただ単に暦の年齢だけで薬物療法の治療選択を行うべきではないとの基本的な原則がある。
その他にも高齢者に対して緩和治療と比較してビノレルビン(VNR)単剤治療やゲムシタビン(GEM)がOSを延長した(J Natl Cancer Inst 1999;91:66, J Natl Cancer Inst 2003;95:3362)との報告やドセタキセル(DTX)単剤がVNRと同等の効果を示した(JCO 2006;24:3657)がある。そのため、ドライバー変異のないPS0-1の75歳以上の症例の1次治療としては「第3世代細胞障害性抗癌剤単剤が推奨」されてる。
また、推奨の強さは劣るがDTX単剤やVNR単剤、GEM単剤と比較してweeklyシスプラチンやCBDCAを比較した試験も検討され、いろいろ議論があるものの高齢者の非小細胞肺癌に対して「CBDCA併用療法を提案する」こともできる。
今回のような高齢者に絞ってエントリーし、前向きに比較検討された大規模第3相試験は見つからないので、本試験は大変評価されうる結果と考える。ただ実臨床で多くの化学療法を扱っている場合には容易に想像つくが、貧血や血小板減少などのCBDCAに特徴的な有害事象に関してはDTXよりも頻度が高いので引き続きの注意を要することに留意されたい。DTX単剤の方に頻度の高い好中球減少に関しても最近はPeg-G-CSF製剤があるため、もしかしたらここで報告されているよりも実感としては頻度は少ないかもしれない。本研究の結果をもとに実年齢と共にやはりPSをよく吟味して高齢者に対する化学療法に関しては今後も検討したい。