『Radiographic patterns of symptomatic radiation pneumonitis in lung cancer patients: Imaging predictors for clinical severity and outcome』(Lung Cancer 2020;145:132)より
まとめ
- 肺癌で放射線照射でグレード2以上の放射線肺臓炎を起こした82例の検討
- ハイグレード放射線肺臓炎とPS不良、SQ、1秒量 2L以下が関連
- 放射線肺臓炎による死亡と高齢、SQが関連
- 最も頻度の高い画像パターンはOPパターンだった
要約
〇ダナファーバーがん研究所のRadiation Oncology Databaseから2005年から2014年に肺癌に対して胸部放射線治療を行った815例中、有症状(グレード2以上)の放射線肺臓炎を発症した82例を選択。
〇画像所見とハイグレード(グレード3以上)の放射線肺臓炎、放射線肺臓炎による死亡との関連を検討。
〇全症例82例中、グレード2:60例、グレード3:15例、グレード5:7例。
〇ハイグレード放射線肺臓炎とPS不良、扁平上皮癌、1秒量が2L以下が関連。
〇放射線肺臓炎による死亡と高齢、扁平上皮癌が関連。
〇最も頻度の高い画像パターンは器質化肺炎(OP)パターンであり、次は急性間質性肺炎(AIP)/ARDSパターンだった。
〇多変量解析では画像上でのAIP/ARDSパターンがハイグレード放射線肺臓炎と有意な関連(OR 12.62)があった。
キュート先生の視点
肺癌の治療は手術、化学療法のほか、放射線治療が大事な選択肢として挙げられる。特にこの数年は切除不能III期非小細胞肺癌に対して根治的化学放射線治療後に抗PD-L1抗体であるデュルバルマブ(イミフィンジ®)を投与することで全生存期間OSの延長を得られるという『PACIFIC試験』(NEJM2018)の結果から、実臨床では何とか工夫して放射線照射を完遂していることが多い。
しかしながら忘れてはいけないのが、根治的化学放射線治療後のデュルバルマブ投与はあくまで維持療法であり、患者さんに呼吸困難の症状が強く出ている、肺臓炎の陰影が広範囲に広がっているなどの状況では無理に維持療法を継続する必要はない。
本研究に目を通して分かることだが、肺に対して放射線治療に携わる医師は少なくともCTでの「OP」「AIP/ARDS」パターンに関しては熟知しておく必要がある。
そして放射線肺臓炎のCTCAEのグレード分類も必ず覚えておきたい。
グレード1と2の差はやや漠然としているが、症例に症状があるかどうかにかかっている。症状のある/なしに関しては患者さんの訴えがメインであるので、なかなか外来で判断しづらいところがある。酸素が必要となるようなグレード3以上(ハイグレード)の放射線肺臓炎の場合には今後の治療継続にも支障がでるので注意が必要となる。
本研究の結果からやはりPS不良例や肺機能で閉塞性換気障害のあるような症例、そして扁平上皮癌(おそらく喫煙歴が関連)では、当然であるが放射線肺臓炎を併発した際には重症化(酸素が必要になるなど)しやすいので注意しながら治療を検討する必要がある。