キュート先生の『肺癌勉強会』

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【VISION】MET遺伝子変異のある非小細胞肺癌に対するテポチニブの効果と安全性

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『Tepotinib in Non–Small-Cell Lung Cancer with MET Exon 14 Skipping Mutations』(NEJM2020より)

まとめ

  • MET遺伝子変異陽性非小細胞肺癌にMET阻害薬であるテポチニブの効果と安全性を見た第2相試験
  • 152例でテポチニブで治療され、99例が9カ月以上フォローできた
  • 主要評価項目は奏効率ORR:46%。
  • 奏功期間DORの中央値11.1カ月
  • グレード3以上の有害事象は28%、浮腫が7%

要約

○エクソン14MET遺伝子変異は非小細胞肺癌の3-4%に認められる。

○今回、高選択性MET阻害薬であるテポチニブtepotinibの安全性と効果を評価した。

○オープンラベル、第2相試験。

○進行/転移性非小細胞肺癌でエクソン14METスキッピング変異を認めた152例に対し、テポチニブ500mgを1日1回投与した。

主要評価項目は奏効率ORR:46%(95%CI:36-57%)

○奏功期間DOR:11.1カ月(95%CI:7.2カ月-評価不能)

○リキッドで調べた66例の奏効率RR:48%

○組織で調べた60例の奏効率RR:50%

○グレード3以上の有害事象は28%で認められ、7%は末梢性の浮腫。

○cfDNAで評価できた症例での分子的な奏功は67%に認められた。

キュート先生の視点

現在行われているASCO2020での発表からの『VISION試験』について取り上げた。すぐにNEJMに掲載されて相変わらず驚かされる。

テポチニブ(テプミトコ®)は2018年3月27日に先駆け審査指定を受け、先日2020年3月に世界で初めて本邦で承認を受けた。MET遺伝子エクソン14スキッピング変異でMETの異常な活性化が引き起こされがん細胞の増殖や転移が起こることが知られている。今回のテポチニブはこのMET受容体のチロシンキナーゼのリン酸化を阻害し、PI3K/AKT経路とMAPK/ERK経路の下流シグナルを阻害することによりがん細胞の増殖や転移を抑制すると考えられている(Clin Cancer Res 2013;19:2941)。

非小細胞肺癌933例を対象として次世代シーケンサー(NGS)で分析した遺伝子型を評価した研究ではKRAS変異(34%)、EGFR変異(19%)、ALK変異(3.9%)、BRAF変異(3.8%)に次いで今回取り上げたMETエクソン14変異が3.0%認められたとの報告がある(JCO 2016;34:721)。

MET遺伝子変異を調べるコンパニオン診断薬は『Archer®METコンパニオン診断システム』が血漿検体と腫瘍組織検体として製造販売承認を受けており、近日中に実臨床でも使用することができるようになるだろう。今後、腫瘍検体をどのようにドライバー変異の検索やPD-L1発現率の確認に回すのか、腫瘍組織が小さい場合や血漿検体はどのタイミングで提出するのかなど実臨床では頭を悩ます事態になることが容易に予想されるが、多くの肺がん治療専門家に今後お伺いしていきたいところである。