キュート先生の『肺癌勉強会』

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免疫治療を受けた進行非小細胞肺癌症例でPS2以上は予後不良因子

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『ECOG performance status ≥2 as a prognostic factor in patients with advanced non small cell lung cancer treated with immune checkpoint inhibitors—A systematic review and meta-analysis of real world data』(Lung Cancer 2020;145:95)より

まとめ

  • 免疫チェックポイント阻害薬で治療された非小細胞肺癌の19の論文の検討
  • 3600症例のうちECOG PS1以上は757例
  • PS2以上の症例はOS不良、PFS不良、ORR低下。

要約

〇免疫チェックポイント阻害薬は多くの症例で使用され、その効果も示されている。

〇免疫チェックポイント阻害薬や他の薬剤でも言えることだが、多くの臨床試験ではPS0,1の症例が組み込まれ、PS2以上の症例は除外されていることがほとんどである。

〇進行非小細胞肺癌に対して免疫チェックポイント阻害薬で治療を検討された19の臨床試験をシステマティックレビューとして選び、リアルワールドデータとしてメタ解析を行って検討した。

〇3600例の非小細胞肺癌症例のうち757例(平均して21%)がPS1以上の症例

PS2以上の症例は

 -OS不良(HR 2.72、95%CI:2.03-3.63、I2:72.70%、p<0.001)

 -PFS不良(HR 2.39、95%CI:1.81-3.15、I2:73.03%、p<0.0001)

 -ORR低下(OR 0.25、95%CI:0.11-0.56、I2:0.00%、p=0.001)

だった。

キュート先生の視点

現在、非小細胞肺癌の治療はかなり幅広く免疫チェックポイント阻害薬単剤による治療やプラチナ併用療法に免疫治療を併用する、いわゆる「ケモコンボ」が使用されている。つい5年前までは恐る恐るニボルマブ(オプジーボ®)を投与していたことを考えると、当時は今の多くの症例が外来化学療法室で免疫治療を行っている光景は想像できなかっただろう。

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そのため以前にも高齢者やPS不良症例に対する免疫治療や化学療法、分子標的薬による論文を取り上げたが、実臨床では肺癌は高齢者やPS不良者がもともと多いため、本研究のような報告は大変にありがたい。多くの臨床試験ではPS2以上の「あまり元気ではない」症例はそもそもはじかれているので、実臨床の目の前の「あまり元気ではない」肺癌症例に臨床試験の結果をそのまま当てはめるのは乱暴と言えよう。

殺細胞性化学療法でもPS2以上は予後不良因子と示されている(Eur J Cancer 2010;46:735)が、今回のメタ解析の結果からPS2以上は免疫チェックポイント阻害薬でも効果が期待できない一つの要因ですよ、ということは覚えておかなければいけない。当たり前の結果かもしれないが。

その原因として元気でない症例の免疫の疲弊が関係しているのでは、と考察されているが、免疫学的な機序や分子生物学的な機序に関してはあまり触れられていない。

今回のシステマティックレビューとして取り上げられた論文のうち5報が本邦からの報告で嬉しく思う。それだけ日本では高齢者、PS不良者を治療対象として扱っているのか、それとも幅ひろーーーーく免疫治療を行っているのかは推測の域を脱しないが、そのような症例を我々は扱っているため関心が深いものと考える。

本論文を読んでも、PS2の非小細胞肺癌症例で、殺細胞性抗癌剤はその有害事象から耐えられそうにない、分子標的薬は使い終わった、BSCにするには忍びない、なんてPS2以上の症例に対しては何ら治療の選択には変わりがなく、やはり今後も免疫治療を1度はチャレンジしてみるのだろう、と心の中でコッソリ思う。