キュート先生の『肺癌勉強会』

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【INSIGHT】MET過剰発現/MET増幅+EGFR陽性非小細胞肺癌に対するテポチニブ+ゲフィチニブの第1b/2相試験

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『Tepotinib plus gefitinib in patients with EGFR-mutant non-small-cell lung cancer with MET overexpression or MET amplification and acquired resistance to previous EGFR inhibitor (INSIGHT study): an open-label, phase 1b/2, multicentre, randomised trial』(Lancet Respir Med 2020 Published Online May 29, 2020 https://doi.org/10.1016/S2213-2600(20)30154-5)

まとめ

  • MET過剰発現/MET増幅のあるEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対するMET阻害薬であるテポチニブ+EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)ゲフィチニブの併用療法の第1b/2相試験
  • 主要評価項目は無増悪生存期間PFS:テポチニブ+ゲフィチニブ群 4.9カ月 vs 化学療法群4.4カ月
  • MET過剰発現(IHC3+)群でPFS:テポチニブ+ゲフィチニブ群 8.3カ月 vs 化学療法群 4.4カ月
  • MET増幅群でPFS:テポチニブ+ゲフィチニブ群 16.6カ月 vs 化学療法群 4.2カ月
  • グレード3以上の有害事象で頻度の高いものはアミラーゼ上昇(16%)、リパーゼ上昇(13%)がテポチニブ+ゲフィチニブ群で認められた。

要約

〇EGFR阻害の耐性獲得としてMET過剰発現(免疫組織化学IHCで2+/3+)/MET増幅のあるEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対し、MET阻害薬であるテポチニブ+EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)ゲフィチニブの併用療法の第1b/2相試験を行った。
〇第1b相試験ではテポチニブ300mgあるいは500mgの内服とゲフィチニブ250mgの内服
〇第2相試験ではT790M変異のないEGFR陽性+MET過剰発現/MET増幅の症例に対してテポチニブ+ゲフィチニブあるいはプラチナ併用療法を行った。
〇第1b相試験に18例を登録し、用量依存性の有害事象が認められなかったため第2相試験でのテポチニブは500mgが推奨用量とされた。
〇第2相試験では55例が登録され、テポチニブ+ゲフィチニブ群に31例、化学療法群に24例振り分けられた。
主要評価項目は無増悪生存期間PFS:テポチニブ+ゲフィチニブ群 4.9カ月 vs 化学療法群4.4カ月
 -MET過剰発現(IHC3+)群
  PFS:テポチニブ+ゲフィチニブ群 8.3カ月 vs 化学療法群 4.4カ月
 -MET増幅群
  PFS:テポチニブ+ゲフィチニブ群 16.6カ月 vs 化学療法群 4.2カ月
〇副次評価項目は全生存期間OSと安全性とした。
〇全生存期間OS:テポチニブ+ゲフィチニブ群 17.3カ月 vs 18.7カ月
〇グレード3以上の有害事象で頻度の高いものはアミラーゼ上昇(16%)、リパーゼ上昇(13%)がテポチニブ+ゲフィチニブ群で認められた。

キュート先生の視点

『VISION試験』として先日のASCOの発表、およびNEJMの掲載で注目されているMET阻害薬「テポチニブ(テプミトコ®)」のEGFR陽性非小細胞肺癌に対する第1/2相試験。

もともと非小細胞肺癌の3-4%に認められるエクソン14MET遺伝子変異であるが、今回はEGFR-TKIの耐性機序としてのMET過剰発現やMET増幅を意識しての臨床試験である。

EGFR陽性非小細胞肺癌症例のEGFR-TKI初期耐性機序にはHGFの高発現に次ぎ、MET増幅われている。獲得耐性機序としてはメジャーな機序は有名なT790M耐性遺伝子変異ですが、獲得耐性機序としてもMET増幅は約10%を占める重要な遺伝子異常と捉えることができる。

もうすぐ実臨床でも使用可能とされているMET遺伝子変異を調べるコンパニオン診断薬『Archer®METコンパニオン診断システム』が血漿検体と腫瘍組織検体で製造販売承認を受けている。ただ、耐性機序としてこの検査が使用できるかは確認が必要。

今後はT790M耐性遺伝子変異を調べるための2ndバイオプシーでこのMET遺伝子や組織型の形質転換をしっかり見て個別化した治療を意識していきたい。

本研究ではMET阻害薬に併用するEGFR-TKIとしてゲフィチニブが使用されているが、そもそも前治療で過半数の症例ゲフィチニブを使用されている。現在1次治療ではほとんどがオシメルチニブを使用している状況下ではC797S耐性変異はMET増幅が考えられ、少し本研究のセッティングとは異なってしまうのかな、という懸念はぬぐえないが、大事な研究結果であることは間違いないのでここに紹介することとした。