キュート先生の『肺癌勉強会』

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【Oncology Tribune 連載27回目】扁平上皮肺がんにS-1維持はナブパク維持で示せなかった無増悪生存を延長

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『A Randomized Phase 3 Study of Maintenance Therapy With S-1 Plus Best Supportive Care Versus Best Supportive Care After Induction Therapy With Carboplatin Plus S-1 for Advanced or Relapsed Squamous Cell Carcinoma of the Lung (WJOG7512L)』(Cancer 2020年6月2日オンライン版)より

医療情報サイト『Oncology Tribune』に論文レビューを寄稿しました。

キュート先生の視点

西日本がん研究機構(WJOG)からの発表でCancer誌に掲載された論文を取り上げた。最近は分子標的薬や免疫治療の報告が多く、本試験のような抗がん薬の、しかも内服のエビデンスが出てくることは、現場で働く者としては大変嬉しく興奮せざるを得ない。

 

導入療法完遂後に


 S-1継続投与群 67例
 経過観察群 64例

 

にランダムに割り付け。

主要評価項目である無増悪生存期間 PFSは導入療法が終了しランダム化後イベントが起こるまでとされた。

 

PFS中央値は経過観察群の1.0カ月(95%CI 0.9-1.2カ月)に対し、S-1継続投与群では1.6カ月(1.2-2.0カ月)と有意な延長を認めたとの結果。

 

現在、進行扁平上皮肺がんに対して一般的に用いられる『KEYNOTE-407試験』でのレジメンであるカルボプラチン+パクリタキセル(またはナブパクリタキセル)+ぺムブロリズマブと効果を比較すると見劣りはするが、末梢神経障害や脱毛の発生頻度を見ると、有害事象の点からは本レジメンに分がありそう。

維持治療を行わなくてもOSには変わりがないとのことなので、批判的な解釈をすればやらない方がいいのでは、という意見もありそう。実臨床では効果を持続させたいと考えられる場面はあるかと思うのでここで紹介した。

 

詳細は『Oncology Tribune』に図表と共に掲載されています。