キュート先生の『肺癌勉強会』

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【IMpower131】進行扁平上皮肺癌に対するカルボプラチン+ナブパクリタキセル+アテゾリズマブ

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『Atezolizumab in Combination With Carboplatin and Nab-Paclitaxel in Advanced Squamous NSCLC (IMpower131): Results From a Randomized Phase III Trial』(J Thoracic Oncol 2020)より

まとめ

  • 未治療進行扁平上皮肺癌に対しCBDCA+NabPAC+Atezo vs NabPAC+AtezoのPFS 6.3カ月 vs 5.6カ月で有意に延長
  • OSは有意差を得られなかった。

要約

〇組織あるいは細胞診で診断された未治療IV期扁平上皮肺癌でPS 0-1、PD-L1の組織学的な検索ができる症例1021例が登録された。

〇症例は無作為に

 アテゾリズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル(A+CP群) 338例

 アテゾリズマブ+カルボプラチン+ナブパクリタキセル(A+CnP群) 343例

 カルボプラチン+ナブパクリタキセル(CnP群) 340例

に振り分けられ、21日サイクルで4-6コース行われた。

〇A+CP群、A+CnP群はアテゾリズマブの維持治療を病勢が増悪するか、臨床的にメリットがなくなるまで投与された。

〇主要評価項目はITT群での調査者評価の無増悪生存期間PFSと全生存期間OS。

〇副次評価項目はPD-L1発現別のPFSとOS、そして安全性を含み、主要評価項目のPFSとOSはA+CnP群とCnP群で評価された。

〇ITT集団でのPFS中央値:A+CnP群 vs CnP群で6.3カ月 vs 5.6カ月(HR 0.71、95%CI:0.60-0.85、p=0.0001)でアテゾリズマブ併用群が有意にPFSを延長した。

〇 ITT集団でのOS中央値:14.2カ月 vs 13.5カ月(HR 0.88、95%CI:0.73-1.05、p=0.16)であり有意差を得られなかった

〇PD-L1高発現群(TC3 or IC3)でのサブ解析ではA+CnP群の無増悪生存期間の中央値 10.1カ月(HR 0.41)、OS中央値 23.4カ月(HR 0.48)であった。

〇治療に関連するグレード3/4の有害事象と重篤な有害事象は、A+CnP群で68.0%、47.9%認め、CnP群では57.5%、28.7%であった。

キュート先生の視点

進行扁平上皮癌に対する複合免疫療法(ケモコンボ)である『IMpower131試験』の結果が発表されました。今まで扁平上皮肺癌に対する複合免疫療法としては、ぺムブロリズマブとプラチナ併用化学療法の『KEYNOTE407試験』が頭に思い浮かびます。

この試験ではぺムブロリズマブ併用群での無増悪生存期間PFS 6.4カ月、全生存期間OS 15.9カ月という結果でした。もちろんフォローアップ期間の中央値が『KEYNOTE407試験』では7.8カ月であることは差し引いて考える必要がありますが、全症例、PD-L1発現別に全てのサブグループでOSの延長効果を認めたぺムブロリズマブ併用レジメンに軍配が上がったようです。この差はやはりPD-1抗体なのかPD-L1抗体なのかと考えるよりほかないのでしょう。

そして、議論が尽きないのはPD-L1高発現群(本研究の場合ではTC3/IC3)に対してぺムブロリズマブ単剤がよいのか、『KN407』レジメンがよいのか検討されることとなり、現時点で免疫治療同士の比較検討試験がありませんので答えが出せません。『KEYNOTE024試験』のぺムブロリズマブ単剤の結果がかなり良好であったためにICI単剤がいいだろう、とお考えの先生もおりますし、やはり1次治療は可能な限りコンボで腫瘍をたたきに行く方がいいだろう、とお考えの意見もあります。どちらの意見も理解できますが、決定打がありません。

本研究の結果を受けて(全生存期間OSでアテゾリズマブ併用群で有意差を認めなかったために)、残念ながらアテゾリズマブの扁平上皮肺癌での開発が中止となっております。