『PD-L1 expression and response to pembrolizumab in patients with EGFR-mutant non-small cell lung cancer』(JJCO 2020;50:617)より
まとめ
- アンコモンEGFR遺伝子変異のある非小細胞肺がん症例は、コモンEGFR変異の症例よりもPD-L1発現率50%以上の症例が多い
- EGFR遺伝子変異陽性の症例を含めてもPD-L150%以上の症例はぺムブロリズマブ単剤治療の効果が高い
要約
〇155例のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの症例でぺムブロリズマブの反応との関係を後ろ向きに観察した。
〇エクソン19 deletionとエクソン21 L858R変異を「コモン変異」とし、その他の変異を「アンコモン変異」とした。
〇コモン変異症例が134例、アンコモン変異症例が21例であり、それぞれPD-L1発現率50%以上、1-49%、1%未満に分けると、12.7%、29.1%、58.2%と33.3%、33.3%、33.3%でありアンコモン変異症例の方がPD-L1発現が高いことが示された(p=0.02、Fisher's exct test)。
〇ぺムブロリズマブが投与された14例の奏効率は36%であり、そのうち9例のコモン変異の症例では22%の奏効率、5例のアンコモン変異の症例での奏効率は60%であった。
〇特にアンコモン変異でPD-L1発現率50%以上だと奏効率75%だった。
キュート先生の視点
静岡がんセンターからの報告で155例のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん症例で、PD-L1発現率が示されており、うちぺムブロリズマブを使用した14例についての検討です。
静岡がんセンターでもコモン変異であったとしても134例中9例のぺムブロリズマブ投与にとどまっており、そもそもEGFR陽性だと免疫治療の投与までいかないことが示唆される結果であったと捉えることができます。逆にアンコモン変異である場合にはEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の効果が期待できないこともあり、EGFR-TKIが投与されていないあるいは奏功していないケースが考えられ、免疫治療に移行しやすいと考えることができます。本研究でもそのような傾向があります。
そもそもEGFR陽性非小細胞肺がんは免疫治療の臨床試験から除外されていることも多いため、そのような患者群に対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)や複合免疫療法の効果が分からないのですが、本研究の結果からEGFR陽性であっても、アンコモンであっても、PD-L1発現率が高発現であれば、ICIによる治療を検討すべきと考えます。
本研究は14例で少数例での検討であることや、後ろ向き研究であること、そしてDel19変異やL858R変異以外を全て「アンコモン」と一括りにしていることはやむをえません。そして初回の生検でのPD-L1発現率が研究に使用されており、EGFR-TKIでのPD-L1発現率への影響が分からないですが、今後、さらに大きな研究が望まれます。
本研究を通して、EGFR陽性非小細胞肺がんであっても、PD-L1が高発現であれば、積極的に免疫治療が治療選択肢のうちの一つになってもよいのではと考えます。ただ、EGFR-TKIの再投与を考える場合には薬剤性間質性肺炎の懸念を考え、免疫治療後の期間を考慮する必要があるので注意が必要となります。