キュート先生の『肺癌勉強会』

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免疫治療単独での非小細胞肺癌では5cmより大きい病変は予後不良

肺癌, 肺癌勉強会, 免疫チェックポイント阻害薬

『Efficacy of immune checkpoint inhibitor monotherapy for patients with massive non‑small‑cell lung cancer』(Journal of Cancer Research and Clinical Oncology 2020, Published online:27 May 2020)より

まとめ

  •  免疫チェックポイント阻害薬単剤で治療されている非小細胞肺癌症例で5cmより大きい病変は予後不良因子

要約

〇一般的に癌においてもともとの腫瘍の大きさや巨大病変の存在は予後因子として重要。

〇2016年1月から2019年7月までに進行/再発非小細胞肺癌で免疫治療を受けた294例を後ろ向きに抜き出した。

〇計測可能病変のある、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)単剤で治療を受けた263例を解析した。

〇総腫瘍径の中央値は96.5mm、最大標的病変の中央値は49.1mm。

〇ベースラインでの最大腫瘍径>50mmの症例群を「group A」、≦50mmの症例群を「group B」とした。

無増悪生存期間PFSの中央値はgroup A vs B:2.5カ月 vs 6.7カ月

全生存期間OSの中央値はgroup A vs B:9.5カ月 vs 20.0カ月

〇多変量解析では「5cmを超える病変の存在」が無増悪生存期間および全生存期間と関連していた。

キュート先生の視点

都立駒込病院からの報告です。

もともと免疫チェックポイント阻害薬は基礎の実験では腫瘍量が多いと、効果が薄いことは言われていました(Nature 2017;545:60)が、実臨床のデータはあまり見かけませんでした。2019年にRECISTでのベースラインでの腫瘍サイズがICIでの治療効果や予後予測因子として言われた報告(Anticancer Res 2019;39:815)があり、今回の報告に繋がります。

何cm以上から巨大病変と捉えるべきか、また腫瘍が大きくなると、辺縁が胸膜や心臓/大血管と接してしまい腫瘍径を正確に測定することが困難となりますが、本研究では5cmを超える病変で区切っています。

試験結果では当然のことでありますが、腫瘍径が5cmを超える場合には無増悪生存も全生存も短縮する、という結果でした。いずれも半分以下に短縮してしまうので、巨大病変の存在はかなり患者さんにとっては厳しいものと考えられます

今後、本研究からは「腫瘍サイズ5cm」というのが一つの目安になりそうです。もちろん腫瘍が小さいうちに発見、診断することは重要なのですが、進行肺癌に至ってしまったとしても5cmは超えない、ということが大事になります。

今回の研究はICI単剤治療での効果ですが、プラチナ併用化学療法とICIの複合免疫療法のデータではありません。今後、このような5cmを超える腫瘍を持った症例に対しては、PS不良であったり、アルブミン値が低く、なかなか複合免疫療法による治療はためらわれることが考えられますが、一度は積極的な治療を検討してみてもよいのでは、と考えされられました。