医療情報サイト『Medical Tribune』『Oncology Tribune』に「新型コロナウイルス×がん診療」のテーマで寄稿しました。
これまで臨床の現場で多くの肺がん患者さんの診断から治療、そして終末期の対応などに当たってきました。しかし今年に入って、この新型コロナウイルス感染拡大下では今まで通りの診療スタイルでは問題があります。米国CDCの重症化リスクガイドラインからも「高齢者」およびがんを含む「基礎疾患を持つ人」が新型コロナウイルスの重症化リスクとして挙げられております。
【COVID-19重症化リスクのガイドライン】
— キュート先生🤗呼吸器内科医 (@cutetanaka) 2020年6月30日
6月25日、CDCはCOVID-19感染時の重症化リスクに関するガイドラインを更新。高重症化リスク属性として「高齢者」「基礎疾患を持つ人」の2つを挙げた。また今回からリスクを高める可能性がある要因として、妊娠が追加。#ケアネットhttps://t.co/DCUH4vQIHC
そこで、肺がん診療の専門家として、新型コロナウイルスパンデミック下でのがん診療において
- がん治療への影響と課題
- 臨床での働き方の変化
- 今後の第二波対策
の3つの話題に分けて一緒に考えていきたいと思います。本稿では「がん診療への影響と課題」についてお話を進めていきます。
がん治療への影響と課題
肺がん診療を行う上でCOVID-19の影響と課題の5つのポイントとして、
- がん患者さんの受診機会の減少
- 医療者の感染防護具の不足
- 積極的治療の忌避
- 医療機関での面会制限
- 臨床試験遂行の困難
が考えられます。
ここからはそれぞれについて医療現場で実際に考えられる新型コロナウイルスの影響とこれからの課題についてまとめていきます。
■がん患者さんの受診機会の減少
新型コロナウイルス感染拡大下では、感染拡大防止のために「不要な外出の自粛」「人との接触を減らす」などの対策が声高に言われており、特に病気の人が集まる病院への不要な受診は差し控えられる傾向にあります。実際に多くの病院では患者さんの受診が激減し、経営にも相当な影響が出ています。
問題なのは「本当に受診が必要な患者さんが病院受診の機会を控えてしまうこと」です。毎年の健康診断を行わなかったり定期的な受診が減ったりすることで、がんが存在する場合にはその間に病勢が進行してしまうことが懸念されます。肺がんでいえば早期肺がんの発見機会を逃し、より進行期になり症状が増悪して、いよいよつらくなってからの病院受診となる症例が増えてしまうのではと心配しています。実際にこの2~3カ月でも、本来はすぐに受診してほしいところ、コロナが不安で受診を差し控えていた初診患者さん数人にお会いしました。今までであれば根治手術が可能であった病期であったり、積極的な根治的化学放射線治療ができた病期であったりしたのが、その治療の機会を失ってしまう可能性があります。
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詳細は『Medical Tribune』『Oncology Tribune』に掲載されています。