『Pyrotinib in HER2-Mutant Advanced Lung Adenocarcinoma After Platinum-Based Chemotherapy: A Multicenter, Open-Label, Single-Arm, Phase II Study』(Journal of Clinical Oncology 2020, published on July 2)
まとめ
- プラチナ併用化学療法治療後のHER2陽性進行非小細胞肺癌に対し、ErbB阻害薬であるピロチニブは奏効率30.0%
ピロチニブは2020年7月時点で肺がんに適応はありません
ので注意が必要です。
要約
〇60例のHER2遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌に対して汎ErbB阻害薬であるピロチニブを投与した単アーム、第2相試験。
〇96.7%がステージIV。41.7%が少なくとも2ライン以上の治療を行った治療歴がある。
〇奏効率は30.0%(95%CI:18.8-43.2%)。
〇治療奏功期間は6.9カ月(95%CI:5.5-8.3カ月)。
〇無増悪生存期間の中央値は6.9カ月、全生存期間の中央値は14.4カ月であった。
〇グレード3/4の治療関連有害事象は28.3%の症例に認め、20.0%に下痢を認めた。
キュート先生の視点
非小細胞肺がんの分子標的薬のターゲットと言えば上皮増殖因子EGFRが有名でありますが、同じErbBファミリーであるHER2をターゲットとした治療に関しては非小細胞肺がんに関してのエビデンスはごく少数です。
乳がん領域においてはトラスツマブやタキサンで治療歴のある症例に対してこの「ピロチニブ」+カペシタビン(ゼローダ®)による治療が効果的であることが示されたことは有名です。
今回、肺癌に対してHER2に対する薬剤の効果が示されたことは大きな話題のうちの一つです。
今後HER2のような新しいターゲットに対する薬剤が肺がんに対しても効果を示し、さらに乳がんに対して治療経験があるため安全性もある程度担保されている薬剤の報告は貴重であると考えます。
ちなみにEGFRはHER2よりも先に発見されたErbBファミリーのうちの一つであり、「HER1」の位置づけになります。