キュート先生の『肺癌勉強会』

肺癌に関連するニュースや研究結果、日常臨床の実際などわかりやすく紹介

非小細胞肺がんの中枢神経系病変に対するオシメルチニブ倍量投与

肺癌, 肺癌勉強会, オシメルチニブ, タグリッソ, Osimertinib,

『A phase II, multicenter, two cohort study of 160 mg osimertinib in EGFR T790M positive non-small cell lung cancer patients with brain metastases or leptomeningeal disease who progressed on prior EGFR TKI therapy』(Ann Oncol 2020)より

まとめ

  • 既治療EGFR陽性T790M耐性遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対しオシメルチニブ160mg投与は脳転移群での頭蓋内奏効率55.0%、癌性髄膜炎群での全生存期間の中央値13.3カ月だった。

要約

〇前向き、単アームの2つのコホート試験において、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)で治療後にT790M耐性遺伝子陽性、脳転移あるいは癌性髄膜炎で病勢増悪した症例に対してオシメルチニブ倍量(160mg)投与の効果を評価した。

〇主要評価項目は脳転移コホート群では奏効率、癌性髄膜炎コホート群では全生存期間とした。

脳転移群において

 -頭蓋内奏効率:55.5%

 -頭蓋内病勢コントロール率:77.5%

 -無増悪生存期間の中央値:7.6カ月(95%CI:5.0-16.6カ月)

 -全生存期間の中央値:16.9カ月(95%CI:7.9カ月-未到達)

だった。

癌性髄膜炎群において

 -頭蓋内病勢コントロール率:92.5%

 -完全奏功率:12.5%

 -無増悪生存期間の中央値:8.0カ月(95%CI:7.2カ月-未到達)

 -全生存期間の中央値:13.3カ月(95%CI:9.1カ月-未到達)

だった。

〇脳転移群においても癌性髄膜炎群においても、オシメルチニブ80mgや他の第3世代EGFR-TKIと無増悪生存期間に違いはなかった。

〇脳転移群において過去の放射線治療は良好な無増悪生存と関連していた。

〇頻度の高い有害事象は食思不振、下痢、皮疹であるが多くがグレード1-2であった。 

キュート先生の視点

多くの非小細胞肺がん症例でEGFR陽性症例でチロシンキナーゼ阻害薬で治療をしていても中枢神経系病変(脳転移、癌性髄膜炎)で病勢増悪することが知られています。オシメルチニブは中枢神経系病変に対しても高い奏効率を認めていることも分かっています。『FLAURA試験』での中枢神経系病変に焦点を当てた試験結果では、1か所以上の測定可能な中枢神経系病変の奏効率は90%を超える結果でした。

本研究はあくまで2次治療以降でT790M陽性の症例に対しての結果ですので、『FLAURA試験』との単純比較はできませんが、オシメルチニブ倍量投与も有効な可能性があります。

ただ本邦で行われている、オシメルチニブ80mg(通常用量)での中枢神経系病変に対する効果を見る『OCEAN試験』が行われております。ASCO2020の発表では頭蓋内病変に対する奏効率が70.0%で無増悪生存期間の中央値が7.1カ月であり、倍量投与とあまり大差ないように感じてしまいますので、論文化されたらしっかり評価したいと考えています。

オシメルチニブは160mgとしても、間質性肺炎や不整脈などの重篤な有害事象がなければ、比較的安全に長期間使用できる薬剤であることは間違いなさそうです。