『Osimertinib in T790M-positive and -negative patients with EGFR-mutated advanced non-small cell lung cancer (the TREM-study)』(Lung Cancer 2020;143:27)より
まとめ
- 2次治療以降のEGFR陽性非小細胞肺癌に対してT790M変異陽性症例の方が陰性症例よりも奏効率が高い
要約
〇第1,2世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)で耐性を獲得したEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌において、T790M耐性遺伝子陽性非小細胞肺癌に対してオシメルチニブは効果的である。
〇この『TREM試験』では調査者主導、多施設、単アーム、第2相試験が5つの北欧の国で行われた。
〇少なくとも1レジメンのEGFR-TKIで治療が行われ病勢増悪した症例に対し、オシメルチニブ1日1回80mgが病勢増悪あるいは死亡まで投与された。
〇症例はT790M変異の有無にかかわらず登録された。
〇主要評価項目は奏効率ORRとされた。
〇199例が登録され、120例(60%)がT790M陽性、52例(26%)がT790M陰性、27例(14%)が不明であった。
〇24%が脳転移を認め、15%がPS2。
〇全症例の奏効率:48%であり
-T790M陽性例の奏効率:60%
-T790M陰性例の奏効率:28%
であり、T790Mの有無で奏効率に差を認めた(p<0.001)。
〇もともとのEGFR遺伝子変異タイプ別には
-del19変異の奏効率:61%
-L858R変異の奏効率:32%
であり、タイプ別にも差を認めた(p=0.001)。
〇全症例の無増悪生存期間PFSの中央値:8.9カ月であり
-T790M陽性例のPFS:10.8カ月
-T790M陰性例のPFS:5.1カ月
であり、PFSにも差を認めた(HR 0.62、p=0.007)。
〇全症例の全生存期間OSの中央値:17.9カ月であり
-T790M陽性例のOS:22.5カ月
-T790M陰性例のOS:13.4カ月
であり、OSにも差を認めた(HR 0.55、p=0.022)。
キュート先生の視点
現時点の日本の「肺癌診療ガイドライン」では、EGFR陽性非小細胞肺癌に対して1次治療でオシメルチニブ以外のEGFR-TKIを使用し、病勢増悪した場合の2次治療に対してはT790M耐性遺伝子変異の検出がオシメルチニブ使用の条件となっております。
本研究『TREM試験』の結果はうすうす分かっておりましたが、T790M遺伝子変異の検出なしにオシメルチニブを使用しても、T790Mが検出された症例ほどは効かないよ、ということです。内緒ですが、実臨床でもそんなイメージがあります。
それはDISCUSSIONでも書かれておりますが、T790M耐性遺伝子以外の耐性メカニズムや小細胞肺癌への転化などが考えられるからです。
多くのEGFR陽性非小細胞肺癌症例は1次治療でオシメルチニブを使用するため、この『TREM試験』のセッティングになりませんが、何らかの理由で1次治療にオシメルチニブが使用できなかった場合にはやはり現状、再生検で「T790M耐性遺伝子変異の検出」が重要になってくる一つのデータが出たのではと思い紹介しました。