『Effectiveness and prognostic factors of first-line crizotinib treatment in patients with ROS1-rearranged non-small cell lung cancer: A multicenter retrospective study』(Lung Cancer 2020;147:130)より
まとめ
- ROS1陽性非小細胞肺がんに対する1次治療でのクリゾチニブ治療では、3つ以上の転移があるとPFS不良
要約
〇ROS1再構成は非小細胞肺がんの1-2%に認められ、本研究はROS1陽性非小細胞肺がんに対するクリゾチニブ(ザーコリ®)の効果を見るために行われた。
〇中国の5つの病院から1次治療としてクリゾチニブが使用されたROS1陽性非小細胞肺がん症例56例を後ろ向きに検討した。
〇年齢の中央値は53歳、91.1%が腺癌。
〇無増悪生存期間PFSの中央値:23.0カ月。
〇全生存期間OSの中央値:60.0カ月。
〇女性(12カ月 vs 24カ月)は男性に比べ、2か所よりも多く転移のある症例(4カ月 vs 24カ月)はそうでない症例に比べPFSが短かった。
〇2か所より多く転移のある症例(6カ月 vs 60カ月)はOSも短かった。
〇多変量解析では「2か所より多い転移」は独立したPFS不良因子であった。
キュート先生の視点
ROS1再構成の症例は実臨床でもなかなかお見掛けすることはありませんが、検出されるとクリゾチニブを使用することができ、しかも長期に安全に管理することが可能です。
本研究の結果は「転移の数が2か所より多い症例」はクリゾチニブの効果が薄い、ということです。言葉だけ聞けば当たり前のように感じますが、単変量で見てみますと、2か所以上の転移のある症例のPFSは4カ月、2か所以下の場合には24カ月なので圧倒的な差であることが分かります。OSでも6カ月と60カ月であり、10倍もの差が示されました。
遠くの方から…「2か所より多くの転移が身体に現れる前に発見して治療を開始せよ」と肺癌に教えられているような気がしてなりません。