キュート先生の『肺癌勉強会』

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【ALEX】未治療ALK陽性非小細胞肺癌に対するアレクチニブの無増悪生存期間 34.8カ月(『ALEX試験UPDATE』)

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『Updated overall survival and final progression-free survival data for patients with treatment-naive advanced ALK-positive non-small-cell lung cancer in the ALEX study』(Ann Oncol 2020;31:1056)より

まとめ

  • 未治療ALK陽性非小細胞肺癌に対するアレクチニブのPFS 34.8カ月

要約

〇未治療のステージIII/IVのALK陽性非小細胞肺癌症例を無作為に

 -アレクチニブ群 152例

 -クリゾチニブ群 151例

に振り分け、病勢増悪あるいは毒性、脱落、死亡まで継続した。

〇主要評価項目は調査者評価の無増悪生存率PFS。

〇副次評価項目は奏効率ORR、全生存期間OS、安全性を含む。

無増悪生存期間PFSの中央値はアレクチニブ群がクリゾチニブ群よりも有意に延長(34.8カ月 vs 10.9カ月、HR 0.43、95%CI:0.32-0.58)した

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[Figure1:無増悪生存期間PFS]

〇全生存期間のデータはimmature(イベントが全体の37%のみ)だが、全生存期間OSの中央値はアレクチニブ群は未到達 vs クリゾチニブ群が57.4カ月(HR 0.67、95%CI:0.46-0.98)であった。

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[Figure2:全生存期間OS]

〇5年生存率は62.5% vs 45.5%であり、それぞれ34.9%、8.6%が最初の治療薬を継続中。

〇診断時に中枢神経系病変のある症例でも全生存期間のHR 0.58、中枢神経系病変のない症例でもHR 0.76とアレクチニブのベネフィットを認めた。

〇新規の安全性に問題のある事象は観察されなかった。

 キュート先生の視点

ALK陽性非小細胞肺癌に対する1次治療はこのアレクチニブ(アレセンサ®)1択で間違いないと考えます。PFSが良好、有害事象もコントロール可能、中枢神経系にも効果が高い、となると他の追随を許しません。

もともと2009-2015年に診断された転移性非小細胞肺癌の5年生存率では6.1%との報告がありますが、近年、ドライバー遺伝子変異に対する分子標的療法が開発/研究が進み、特にこのEML4-ALK転座ALK陽性)に対する臨床試験では生存の改善が目立っています。

ALK陽性非小細胞肺癌に対するクリゾチニブの効果を示した第3相試験『PROFILE1014試験』では10.9カ月という結果でした。

その後、新規ALK阻害薬が開発され、ALK陽性非小細胞肺癌に対するアレクチニブの効果を示した本邦での第3相試験『J-ALEX試験』ではPFSは未到達との結果でした。今回は全世界で行われた『ALEX試験』のアップデート解析とのことでPFSが34.8カ月と大きく対照群のクリゾチニブを引き離しています。

今後は2次治療以降の治療シーケンス、そして免疫治療やALK阻害薬のリトライなどのデータが集積することを期待していますが、1次治療で始めた場合には約3年くらい1つの薬剤を継続することとなり、ALK陽性非小細胞肺癌症例のデータは症例が少ないうえに、集積するにはかなり時間がかかることが予想されます。