『Overall survival of super‑elderly (85 years or older) advanced non‑small cell lung cancer patients with active epidermal growth factor receptor mutations receiving first‑line gefitinib therapy: a single‑institute retrospective study』(J Cancer Res Clin Oncol 2020, published Aug 6)
まとめ
- 85歳以上の超高齢非小細胞肺がんにおいてもPS良好、EGFR陽性は予後良好
要約
〇85歳以上の進行期非小細胞肺がん症例85例を後ろ向きに解析。
〇データの集まった69例で36例はBSC、11例は化学療法、22例がEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)で治療を受けた。
〇PS 0-2の35例では
-EGFR野生型 18例のうち11例が化学療法で治療
-EGFR陽性 17例のうち15例がEGFR-TKIで治療
を受けており、全生存期間は
-EGFR-TKI群:16.9カ月
-化学療法群:7.2カ月
-BSC群:9.8カ月
であった(p=0.059)。
〇PS 3-4の34例ではEGFR陽性の7例がゲフィチニブ(イレッサ®)で治療を受け、残り27例はBSCの方針で、全生存期間は
-EGFR-TKI群:4.6カ月
-BSC群:2.3カ月
であった(p=0.06)。
〇多変量解析では
-1次治療開始時のPSが良好なこと
-EGFR遺伝子変異が陽性なこと
が死亡リスクを減らす結果であった。
キュート先生の視点
症例数は限られており単一施設の研究ではあるものの、この高齢化社会においてこのような報告は大変参考になります。肺がん領域では『肺癌診療ガイドライン』が策定されておりますが、あくまで「ガイドライン」です。目の前の患者さんに全てが当てはまるわけではありませんし、特に臨床試験に乗らないような高齢者や併存症のある方、PS不良の方に関しては、その都度よく考えて診療を勧める必要があります。
本研究も症例が限られており、「有意差」を出すまでには至っておりませんが、85歳を超えるような超高齢者の肺がんであっても、検査、治療に関しては決して諦めてはいけないと思わされます。もちろん安全性をよく検討して患者さんやご家族のご理解のもとでと考えますが、一概にBSCの方針にすればよいという考えは捨てる必要があります。