『Pulmonary Illness Related to E-Cigarette Use in Illinois and Wisconsin — Final Report』(NEJM 2020;382:903)より
※論文で取り上げられている「電子タバコ e-cigarette, vaping」は、日本で一般的に販売されているアイコスやプルームテックのような「加熱式タバコ」とは異なりますので注意が必要です。
まとめ
- 電子タバコ関連肺疾患と考えられる98症例で26%が挿管/人工呼吸器管理、2例が死亡した。
要約
〇電子タバコ(e-cigarette, vaping)は液体を加熱して出てきたエアロゾルを喫煙する電池式のタバコである。
〇電子タバコ関連の肺疾患の症例報告は散見されるが、大規模な報告はない。
〇2019年7月にウィスコンシン州とイリノイ州で電子タバコ関連肺疾患の共同公衆衛生調査を行った。
〇発症前90日間に電子タバコを使用し、画像で肺浸潤影を認めた症例を集積し、他の原因が考えられる症例は除外した。
〇電子タバコ関連肺疾患と考えられた症例は98例、79%が男性、年齢の中央値は21歳。
〇症状は97%が呼吸器症状、77%が消化器症状、全例で全身症状の訴えで病院を受診した。
〇98例中、93例(95%)が入院管理となり入院期間の中央値は6日(1-72日)、52例(53%)でICU入室となり、25例(26%)が挿管/人工呼吸器管理、2例が死亡した。
〇89%が電子タバコでテトラヒドロカンナビノール製品を使用していたが、タバコの器具は多様であった。
キュート先生の視点
※論文で取り上げられている「電子タバコ e-cigarette, vaping」は、日本で一般的に販売されているアイコスやプルームテックのような「加熱式タバコ」とは異なりますので注意が必要です。
本論文中にも症例の画像が示されていますが、急速に両側の気道に沿った広範な浸潤影とすりガラス陰影を認め、末梢はスペアされている画像的な特徴があります。
電子タバコ関連肺疾患は『e-cigarette, or vaping, product use asssociated lung injury(EVALI)』とも呼ばれます。電子タバコのリキッドやその加熱して発生したエアロゾルには様々な化学物質が含まれており、身体に重篤な影響を与えるものも含まれる可能性が示唆されています。特にニコチン入りの電子タバコではプロピレングリコールやグリセリンがニコチンとともに含まれることも指摘されています。
年齢層は若いのですが、死亡例も含まれるとのことで、今後はこのような新型タバコ関連肺疾患についても注目してきたいと思います。