キュート先生の『肺癌勉強会』

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電子タバコは禁煙に有効?

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『A Randomized Trial of E-Cigarettes versus Nicotine-Replacement Therapy』(NEJM 2019;380:629)より

※論文で取り上げられている「電子タバコ e-cigarette, vaping」は、日本で一般的に販売されているアイコスやプルームテックのような「加熱式タバコ」とは異なりますので注意が必要です。

まとめ

  • 行動支援とともに行った場合に電子タバコの方がニコチン代替療法よりも禁煙に有効

要約

〇電子タバコは一般的に禁煙を目的に使用されている。

〇禁煙補助薬として承認されているニコチン代替療法との比較のデータは限定的である。

〇イギリスの国民保健サービスの禁煙サービスに参加する成人を

 -ニコチン代替製品を最長で3カ月使用できる群

 -電子タバコスターターキット(第2世代電子タバコとニコチン入りリキッド)群

に無作為に割り付けた。

〇治療としては週1回の行動支援を最低4週間行われた。

〇主要評価項目は1年間の禁煙継続とし、最終受診時に生化学的にも検証した。

〇886例が無作為化され、438例が電子タバコ群、446例がニコチン代替群として評価された(各群試験中に1例ずつ亡くなった)。

1年禁煙率は

 -電子タバコ群 18.0%

 -ニコチン代替群 9.9%

であり、電子タバコ群の方が有意に禁煙率が高かった(RR 1.83、95%CI:1.30-2.58、p<0.001)

〇1年経過した時点で、電子タバコ群では80%が割り付けられた製品を使用しており、ニコチン代替群は9%であった。

〇咽頭、口腔の刺激感は電子タバコ群の方が多く(65.3% vs 51.2%)、悪心はニコチン代替群の方が高かった(31.3% vs 37.9%)。

〇ベースラインから52週までの咳嗽と痰の頻度は電子タバコ群で多かった(咳嗽のRR 0.8、痰のRR 0.7)が、喘鳴、息切れの頻度は差を認めなかった。

キュート先生の視点

海外では電子タバコe-cigaretteは、従来の「紙巻きタバコの禁煙」目的で使用されることが多いようなのですが、そもそもニコチンを含有するリキッドを吸う「電子タバコ」への移行がいいことなのかどうか、というのは定かではありません。

先日の「電子タバコ」のNEJMの報告をブログにアップした際にも、海外から「オレはこれでタバコが止められたんだ。電子タバコはいいものなんだよ。」みたいなリプライがつき、いまいち認識に温度差があることが分かりました。

日本には電子タバコはなく、「加熱式タバコ」と「ニコチン代替療法」しかありませんので、日本でも加熱式タバコで禁煙している・・・のような認識にならないことを祈っています。