キュート先生の『肺癌勉強会』

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トンデモ医療にだまされるな!標準療法を受けず代替療法のみを受けると予後不良

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『Use of Alternative Medicine for Cancer and Its Impact on Survival』(J Natl Cancer Inst 2018;110:121)より

まとめ

  • 標準療法を受けず代替療法のみを受けると予後が悪くなる

▲アラバマ大学 大須賀覚先生によるコラム

要約

〇がん患者の代替療法の有効性に関する情報は限られている。

〇化学療法、放射線療法、手術、ホルモン療法として定義された従来のがん治療を受けていない患者のうち、代替療法を選択した乳癌、前立腺癌、肺癌、大腸癌の症例281例を「代替療法群」として選択した。

〇2:1マッチングで標準療法を行っている560例を「標準療法群」として選択し、比較検討を行った。

〇「代替療法群」を選択した症例は多変量解析で乳癌や肺癌、より高い社会経済的地位、山間部や太平洋地域、ステージII/III、および低い併存症スコアの症例が独立した因子として抜き出された。

〇「代替療法群」は「標準療法群」に比べ、全症例、肺がん、乳がん、大腸がんの症例で死亡リスクが高かった。(図1,2、上のコラムから引用)

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[図1:標準療法群と代替療法群の生存率(全症例)]

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[図2:標準療法群と代替療法群の生存率(肺がん・大腸がん)]

キュート先生の視点

多くのメディアで声高に言われておりますが、

 標準治療がいま現在で最もそのがんに対して効果の高い治療

であることを知っておく必要があります。

 

上のコラムを書かれた大須賀覚先生と津川友介先生、勝俣範之先生のがん研究やがん診療を牽引する高名な3先生が執筆された著書『最高のがん治療』にも科学的根拠に基づいたがん診療で気を付けるべき、覚えておくべきポイントが書かれていますので参考にして頂ければ幸いです。

一部のクリニックなどで保険診療外で行われている自由診療、未承認治療、病院外で行われている民間療法などは「代替療法」と呼ばれており、ほとんどが科学的な根拠/エビデンスがないことが多い治療です。

 

本研究の結果からは6年経過した時に、標準療法を受けていた症例は75%が生存していたのに対し、代替療法のみを受けていた症例は50%の生存となって差を認めた、という結果でした。

 

実臨床でも時々お見掛けすることがありますが、がんと診断されるとどのような方でも冷静ではいられなくなってしまうことがあります。医師が勧める正しい医療を受け入れることができず、エビデンスのない、代替療法に走ってしまう方が少なくありません。もちろんすべてを否定することはありませんが、標準治療を捨てないで意識して欲しいと思っています。ましてや標準療法を受けず、「代替療法」のみを受けることだけは絶対に避けるべきです。

 

そして主治医の先生とよく相談し、今後の治療の相談をするべきと考えます。

 

多くのがん患者さんが正しい治療が受けられますよう、心から祈っています。