『Reduced Lung-Cancer Mortality with Volume CT Screening in a Randomized Trial』(NEJM 2020;382:503)より
まとめ
- 男性喫煙者の高リスク群において低線量CTスクリーニングは肺がん死亡率を低下させた
要約
〇ボリュームデータによる低線量CTスクリーニングが男性喫煙者の肺がん死亡率を下げるかどうかの無作為化試験のデータは限定的である。
〇この『NELSON試験』では喫煙歴のある50-74歳の男性 13195例を主要解析とし、サブグループ解析として女性 2594例をCTスクリーニング群とスクリーニング検査を行わない対象群に振り分けられた。
〇CT評価は試験開始時、1年、3年、5.5年時点で計4回スクリーニングされた。
〇男性でCTスクリーニングの順守率は90.0%。
〇スクリーニング群では平均9.2%の症例でさらに1回以上のCT検査が受けられた。
〇結節を指摘された症例は2.1%。
〇試験開始後10年の時点で肺がん発生率は
-スクリーニング群 1000人年あたり5.58件
-対照群で1000人年あたり4.91件
〇肺がん死亡率は
-スクリーニング群 2.50件
-対照群 3.30件
〇男性において10年時点での肺がんによる累積死亡率は対照群と比較して0.76倍(95%CI:0.61-0.94、p=0.01)、女性において10年時点での肺がん累積死亡率比は0.67(95%CI:0.38-1.14)であった。
〇10年フォロー時での死因はスクリーニング群では肺癌で160例(18.4%)、他の悪性腫瘍(36.6%)、心血管疾患(21.8%)で亡くなったことがわかった。
キュート先生の視点
今回の『NELSON試験』と2011年にアメリカで行われた『NLST試験』(NEJM 2011;365:395)の結果から喫煙者などの高リスク症例に対する定期的なCTスクリーニング検診は肺癌死亡率減少に対して有効である可能性が高いと考えられます。
この喫煙者を集めたハイリスク集団の長期フォローでは肺癌で亡くなる方が多いのはもちろんのこと、他の悪性腫瘍や心血管で亡くなる方も多いことが個人的にはインパクトがありました。
ただし非喫煙者や40-50歳の若年者、女性などでデータが示されたわけではありませんし、肺癌学会の見解としても対策型の検診として考える場合にはCT機器のリソースやマンパワーの問題もあることから、現時点では慎重な立場であるとしています。
もちろん重喫煙者などのリスクの高い患者さんが自らCT検診を強く希望される場合には、十分に相談の上で検査を行うべきと考えます。
今後の肺癌学会の見解や本邦でのデータ集積、非喫煙者でのデータなどが明らかになり多くの方の肺がんリスクを下げることに繋がることを願っています。