『Complementary Medicine, Refusal of Conventional Cancer Therapy, and Survival Among Patients With Curable Cancers』(JAMA Oncol 2018;4:1375)より
まとめ
- 補完代替療法を治療に取り入れた人は標準治療のみで治療した人よりも生存率が低い
要約
〇代替療法を受けていない人と比較し、代替療法を受けている人の標準療法の順守率や生存期間と代替療法との関連に関する情報は限りがある。
〇代替療法の有無により標準療法を受けているがん症例の全生存や治療の順守率(アドヒアランス)の特徴を比較することを目的とした。
〇この後ろ向き観察研究ではアメリカの約190万人の国立がんデータベースのデータを使用した。2004年1月1日から2013年12月31日までの間に非転移性乳がん、前立腺がん、肺がん、または大腸がんと診断された国立がんデータベースのデータを使用した。
〇「代替療法」は、手術、放射線療法、化学療法、またはホルモン療法として定義された少なくとも1つの標準療法に加えて「非医療従事者によるその他の証明されていないがん治療」として定義された。
〇評価項目は全生存、治療の順守率、およびがん患者の特徴とされた。
〇症例はがん患者190万1815人で代替療法を行っていた258例と対照群190万1557例として選択した。
〇マッチング後の主な解析では
-代替療法群 258例(女性 199例、男性 59例、平均 56歳[48-64歳])
-対照群 1032例(女性 798例、男性234例、平均 56歳[48-64歳])
を選択した。
〇代替療法を選択した患者では、標準療法の開始までの遅れはそれほど長くなかったが、
-手術拒否率 7.0%(258例中18例) vs 0.1%(1031例中1例)、p<0.001
-化学療法拒否率 34.1%(258例中88例) vs 3.2%(1032例中33例)、p<0.001
-放射線療法拒否率 53.0%(200例中106例) vs 2.3% (711例中16例)、p<0.001
-ホルモン療法拒否率 33.7%(258例中87例) vs 2.8% (1032例中29例)、p<0.001
と治療拒否率が高かった。
〇代替療法の選択は代替療法がない場合と比較し、5年全生存率が悪いことと関連しており(82.2% vs 86.6%、p=0.001)、治療の遅れや治療拒否を含まない多変量モデルでは、死亡リスクの増大と独立して関連していた(HR 2.08、95%CI:1.50-2.90)。
〇多変量モデルに治療の遅れや治療拒否を含めると代替療法と生存率の間に有意な関連はなくなった(HR 1.39、95%CI:0.83-2.33)。
キュート先生の視点
本研究の結果から、代替療法を選択した症例群は標準療法を拒否する割合が高く、死亡リスクも高かったという結論です。
「代替療法」とは保険のきかない標準治療以外の未承認治療、とくにクリニックなどで行われている自由診療や病院外で行われている民間療法のことを指します。
先日、「標準療法を受けず代替療法のみ受けると予後不良」という記事(J Natl Cancer Inst 2018;110:121)書きましたが、今回の結論は標準療法+代替療法でも予後不良、という結果です。
本来であれば、標準療法に何か上乗せ効果がありそうに感じますが、本研究の内容から代替療法を選択する症例は標準療法に否定的で、手術や化学療法、放射線療法などの標準療法を拒否する方の割合が高かったとしています。そのことが結果として予後不良に繋がった、と考察されております。
たしかに自分の担当の患者さんでも健康食品や健康グッズなどを行っている方はいらっしゃるのですが、そのようないわゆる代替療法を行うな、とは言いませんが標準療法の治療開始の遅れや妨げにならないようにはお話しています。
本稿はアラバマ大 大須賀覚先生の記事を参考にしています。