『Lorlatinib in previously treated anaplastic lymphoma kinaserearranged non–small cell lung cancer: Japanese subgroup analysis of a global study』(Cancer Sci 2020;00:1-13)より
まとめ
- ALK阻害薬で既治療の日本人ALK陽性肺がんに対してロルラチニブの奏効率は54.8%
要約
〇ロルラチニブは脳にも浸透する第3世代ALK/ROS1チロシンキナーゼ阻害薬であり、頻度の高い耐性変異に対しても効果がある。
〇本研究はALK/ROS1陽性の進行非小細胞肺がんに対してロルラチニブの効果、安全性、薬物動態を調査した進行中の第1/2相試験(NCT01970865)である。
〇他の地域とALK-TKIの使用パターンが日本では異なるため、日本人サブセットで解析を行った。
〇症例はALK/ROS1の変異タイプと治療歴で6つの拡大コホートに登録された。
〇主要評価項目は独立評価委員による奏効率と頭蓋内病変の奏効率とした。
〇副次評価項目は薬物動態の評価が含まれた。
〇データカットオフ時に39例のALKあるいはROS1再構成の日本人症例が6つの拡大コホートに登録され、全例ロルラチニブ100mg/日が投与された。
〇31例の1コース以上のALK-TKIで治療されたALK陽性症例が奏効率で評価可能であり、15例が頭蓋内病変で評価可能であった。
〇拡大コホート2-5の日本人での
-奏効率ORR:54.8%(95%CI:36.0-72.7)
-頭蓋内奏効率IC-ORR:46.7%(95%CI:21.3-73.4)
であった。
〇過去にアレクチニブでのみ治療を受けた症例では(コホート3B)、奏効率 42.9%(95%CI:9.9-81.6)だった。
〇最も頻度の高い治療関連有害事象は高コレステロール血症(79.5%)。
〇高TG血症は最も頻度の高いグレード3/4の治療関連有害事象であった。
〇単回投与と複数回投与で日本人の薬物動態プロファイルは非日本人のプロファイルと同等であった。
キュート先生の視点
本研究は九州がんセンターの瀬戸貴司先生からの「Cancer Sci誌」に報告されたロルラチニブの日本人データの報告を読んでみました。
先日、海外での『GLASS試験』での123例のALK陽性あるいはROS1陽性肺がんに対するロルラチニブの効果を見た試験を紹介しました。特にALK陽性肺がんに対しては本邦では1次治療としてアレクチニブ(アレセンサ®)を使用することが多く、過去のクリゾチニブで既治療例での臨床試験では日本のリアルワールドに合致しない事実があります。
今回の拡大コホート3Bに含まれる7例のアレクチニブでのみ治療されたALK陽性肺がんに対するロルラチニブが、現在の日本の状況に合致しているかと思います。
本研究の結果からは比較的有害事象もコントロール可能であり、アレクチニブ耐性後のALK陽性肺がんに対してロルラチニブ(ローブレナ®)は強力な武器になりそうです。