『Influence of smoking cessation after diagnosis of early stage lung cancer on prognosis: systematic review of observational studies with meta-analysis』(BMJ 2010;340:b5569)より
まとめ
- 早期非小細胞肺がん診断後、喫煙を継続すると死亡率2.94倍、再発1.86倍。
要約
〇肺がん診断後の禁煙が予後に与える影響について検討した。
〇「CINAHL」(1981年-)、「Embase」(1980年-)、「Medline」(1966年-)、「Web of Science」(1966年-)、「CENTRAL」(1977年-)から2008年12月までの間の報告からメタ解析とシステマティックレビューを行った。
〇対象となった10の研究のうち9つの研究では、多く症例は初期の肺がんと診断された。
〇喫煙の継続は、
-早期非小細胞肺がんの全死亡率 2.94倍(95%CI:1.15-7.54)
-再発 1.86倍(95%CI:1.01-3.41)
-限局型小細胞肺がんの全死亡率 1.86倍(95%CI:1.33-2.59)
-2次原発がん発生 4.31倍(95%CI:1.09-16.98)
-再発 1.26倍(95%CI:1.06-1.50)
と有意なリスク増加に関連していた。
〇65歳以上の早期非小細胞肺がん症例の5年生存率は
-喫煙継続群:33%
-禁煙群:70%
と推定された。
〇限局型小細胞肺がんの5年生存率は
-喫煙継続群:29%
-禁煙群:63%
と推定された。
〇この生命表モデリングからは禁煙後の心疾患や肺疾患の死亡の減少から予測される数よりも多いため、禁煙による死亡率の減少はがんの進行の抑制による可能性が高い。
〇本研究の結果からは、早期肺がんの症例に禁煙治療を行うことは予後改善のためにも有益である可能性があることを示している。
キュート先生の視点
実臨床でも「がん」を診断されると、言い方は悪いですがヤケクソになって「タバコやめても意味ないんでしょ???」と言って喫煙を続ける患者さんが少なからずいらっしゃいます。本研究は早期肺がん症例のデータであり、進行肺がん症例では分かりませんが、治療選択肢が増えてがんの予後も少しずつ改善されてきた今の時代において「がん」と診断されてすぐにヤケクソになるのはもったいない気がします。
わたくしもがん診療に携わる医療者として、がん症例と冷静に現状を把握し、今後の治療計画や社会的背景を踏まえて一緒に今後を話し合って決めていくことを心がけています。
「がん」診断後にタバコを吸い続けると死亡率が禁煙した人に比べて約3倍上がりますよ・・・。
多くの方に関係するタバコや喫煙/禁煙に関する知見は、今後もブログ『肺癌勉強会』で取り上げていきたいと考えています。