キュート先生の『肺癌勉強会』

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【TORG1936/AMBITIOUS】間質性肺炎、特に蜂巣肺を認める非小細胞肺がんに対するアテゾリズマブは慎重に

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『A Phase 2 Study of Atezolizumab for Pretreated NSCLC With Idiopathic Interstitial Pneumonitis』(J Thoracic Oncol 2020)より

まとめ

  • 間質性肺炎を併存する非小細胞肺がんに対するアテゾリズマブの肺臓炎の有害事象の頻度は29.4%

要約

〇間質性肺炎は非小細胞肺がんでよく認められる予後不良な併存症の1つで、治療に関連する肺臓炎のリスクとしても知られている。

〇アテゾリズマブは進行/再発非小細胞肺がんに対する治療法として承認されており、PD-1阻害薬よりも治療に関連する肺臓炎のリスクが低いであろうと報告されていた。

〇この『TORG1936/AMBITIOUS試験』は多施設共同、単アーム、第2相試験であり、特発性間質性肺炎を併存する既治療進行/再発非小細胞肺がんに対するアテゾリズマブの安全性と効果を評価するために行った。

〇%努力肺活量(%FVC)が70%以上の慢性線維性間質性肺炎を併存し、免疫チェックポイント阻害薬で治療歴のない非小細胞肺がん症例が登録された。

〇症例はアテゾリズマブ1200mg、3週間毎が中止基準を満たすまで投与された。

〇主要評価項目は「1年次での生存率」とされた。

〇本研究は高い頻度での治療に関連する肺臓炎を認め、早期中止となった。

〇17例が登録され、年齢の中央値は70歳、ベースラインでの%FVCの中央値は85.4%、%DLcoの中央値は54.4%。

肺臓炎の頻度は

 -全グレード:29.4%(5例)

 -グレード3以上:23.5%(4例)

 -グレード5:5.9%(1例)

であった。

〇背景に蜂巣肺を認める症例7例中4例(57.1%)でグレード3以上の肺臓炎を認めたが、蜂巣肺を認めない症例10例中1例(10%)のみグレード1の肺臓炎を認めただけであった。

キュート先生の視点

間質性肺炎を認める肺がん症例に対して免疫チェックポイント阻害薬は「慎重投与」となっております。ただし実臨床では肺がん症例のCTをよくくまなく見ておりますと、喫煙歴が多いためか、多少の間質影を認めることが多々ありますので、そういった症例では常に慎重に治療することとなります。

以前に神戸市立医療センターの藤本大智先生が『Lung Cancer』に報告した間質性肺炎合併非小細胞肺がんに対するニボルマブでは18例中2例に肺臓炎を認め、速やかにステロイドで軽快したとの報告でした。

この研究結果からは間質性肺炎を認める肺がんに対する免疫治療は慎重に投与さえすれば比較的安全に使用可能か・・・という考えもありましたが、この『AMBITIOUS試験』で再度考えが改まりました。

もちろん間質性肺炎と言っても、明らかな蜂巣肺を認める症例から、わずかな線状影のみの症例もおりますので、実臨床でよく相談しながら治療戦略を練っていく必要があるかと思います。

本研究でも肺臓炎のリスクファクターについて単変量ロジスティック解析がなされておりますが、症例が限られておりますが「HRCTでの蜂巣肺」はOR 12.00となっており、有意差こそついていないものの、アテゾリズマブを投与すべきではないと考えます。