キュート先生の『肺癌勉強会』

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【IMpower110】PD-L1高発現の未治療進行非小細胞肺がんに対しアテゾリズマブ単剤でも化学療法より上を行く

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『Atezolizumab for First-Line Treatment of PD-L1–Selected Patients with NSCLC』(N Engl J Med 2020;383:1328)より

まとめ

  • PD-L1高発現非小細胞肺がんの1次治療でアテゾリズマブ単剤で全生存期間20.1カ月

要約

〇転移性非小細胞肺がんの1次治療として、PD-L1の発現別で抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブの効果や安全性はプラチナ併用化学療法と比べて知られていない。

〇この『IMpower110試験』は無作為化、オープンラベル、第3相試験であり、未治療の転移性非小細胞肺がんでSP142免疫組織学アッセイによるPD-L1発現がTCで1%以上、ICで1%以上の症例を選択した。

〇症例群は1:1でアテゾリズマブ投与群あるいは化学療法投与群に振り分けられた。

〇主要評価項目である全生存期間はEGFR変異やALK再構成に関してはWild-typeである症例のITT群でPD-L1発現率で階層的に評価した。

〇EGFRやALKのWild-typeを含めて全生存や無増悪生存を前向きに2つのPD-L1アッセイと採血でのTMBによるサブグループでも評価した。

〇本研究には572例が登録された。

PD-L1高発現群205例では全生存期間が

 -アテゾリズマブ群 20.1カ月

 -化学療法群 13.1カ月

アテゾリズマブが7.1カ月延長した(HR 0.59、p=0.01)。

〇全症例での全生存期間は

 -アテゾリズマブ群 17.5カ月

 -化学療法群 14.1カ月

であった(HR 0.83)。

〇症例の検討は22C3アッセイでもSP263アッセイでも検討されており、それぞれの高発現群での全生存期間のハザード比は0.60、0.71であった。

〇全症例で評価した安全性では有害事象はアテゾリズマブ群で90.2%、化学療法群で94.7%であった。

〇グレード3-4の有害事象はアテゾリズマブ群で30.1%、化学療法群で52.5%であった。

〇血液での高TMB群でのサブグループでは全生存も無増悪生存もアテゾリズマブ群で良好だった。

キュート先生の視点

PD-L1高発現の非小細胞肺がんであればアテゾリズマブでも1次治療で化学療法よりも上を行くよ・・・という報告。アテゾリズマブやRoy S. Herbst先生や森瀬先生には申し訳ないのですが、なぜにNEJMに。

2019年にPD-L1≧50%以上の非小細胞肺がんに対するぺムブロリズマブ(キイトルーダ®)単剤の効果を見た『KEYNOTE024試験』のアップデート試験(J Clin Oncol 2019;1;37:537)ではぺムブロリズマブ単剤の全生存期間の中央値は脅威の30.0カ月という結果でした。

現在、本邦では非小細胞肺がんの1次治療としてはプラチナ併用療法に免疫治療をさらに追加する複合免疫療法が幅広く使用されており、本研究の結果が実臨床で活かせる場面を想定することが難しく思ってしまいます。

また今回はPD-L1発現率測定に「SP142アッセイ」をメインで使用しており、本文中には「22C3」や「SP263」による発現率でも検討されておりますが、本邦の実臨床では「22C3」が広く使用されており、単純に今の日本の現状に当てはめることができません。

「TMB」による検討もなされていますが「TMB」も日本の実臨床では一般的に測定できない指標であり、今後の研究に期待したいところです。

誰か本研究について詳しく教えて欲しい・・・と個人的に思っています。