キュート先生の『肺癌勉強会』

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【NADIM】ステージIIIA非小細胞肺がんの周術期ニボルマブで24カ月時点での無増悪生存率は77.1%

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『Neoadjuvant chemotherapy and nivolumab in resectable non-small-cell lung cancer (NADIM): an open-label, multicentre, single-arm, phase 2 trial』(Lancet Oncol 2020)より

まとめ

  • ステージIIIA非小細胞肺がんの周術期ニボルマブで24カ月時点での無増悪生存率は77.1%

要約

〇ステージIIIAで切除可能な非小細胞肺がんに対して術前化学免疫療法の効果と安全性を評価した。

〇この『NADIM試験』はオープンラベル、単アーム、第2相試験でスペインの18の病院で行われた。

〇18歳以上で組織学的に確定されたステージIIIAでPS0-1の症例が登録された。

〇症例は術前ネオアジュバントとしてカルボプラチン(AUC6)+パクリタキセル200mg/m2+ニボルマブ360mgを3週毎、3サイクル投与され、術後アジュバントとして1年間ニボルマブ単剤を240mg2週間毎4カ月投与ののち480mg4週間毎8カ月投与された。

〇主要評価項目はネオアジュバント治療を受けたITT集団と少なくとも1サイクルでの24カ月時での無増悪生存とした。

〇安全性の解析はITT集団で評価した。

〇46例が試験に登録され術前治療を受けた。

〇本研究の症例は全例で過去/現喫煙者であり、N2症例が74%(single 20%、multiple 54%)が含まれた。

〇EGFR遺伝子変異やALK遺伝子変異がある場合、活動性の間質性肺炎や自己免疫疾患がある場合などは除外された。

〇2020年1月のデータカットオフ時にフォローアップ期間の中央値は24.0カ月で、手術を受けた41例中35例(85.4%)が増悪のない状態だった。

24カ月時点での無増悪生存率は77.1%(95%CI:59.9-87.7%)

〇術前治療を受けた46例のうち43例(93%)で治療に関連する有害事象を認め、14例(30%)がグレード3以上だったが治療に関連した手術の遅延や死亡は認めなかった。

〇頻度の高いグレード3以上の治療関連有害事象は7%でリパーゼ上昇、7%で発熱性好中球減少症だった。

キュート先生の視点

この『NADIM試験』は単アームの第2相試験であり、今までの術前プラチナ併用化学療法+手術と比較したわけではありません。

肺癌診療ガイドラインで勧められているステージIIIAでの術前プラチナ併用療法としてシスプラチン+ゲムシタビンを用いた第3相試験では手術単独治療と比較して全生存のHR 0.42と生存期間の延長を示しています。また、N2症例では「放射線療法も併用するように提案する(推奨の強さ2)」となっておりますが、このクリニカルクエスチョンに対してはエビデンスの質として不十分であると解釈されています。

また切除不能なステージIII非小細胞肺がんに対しては根治的化学放射線療法後のデュルバルマブが一般的に使用されておりますが、今後ステージIII症例に対しては今まで以上に手術の適応、根治的放射線の適応、免疫療法の適応などにつき内科、外科、放射線科で十分にかつより慎重に検討する必要がありそうです。