『Multisystem Immune-Related Adverse Events Associated With ImmuneCheckpoint Inhibitors for Treatment of Non–Small Cell Lung Cancer』(JAMA Oncol 2020, Published Oct. 29)より
まとめ
- 免疫関連有害事象を認めた群が有害事象がなかった群に比べて無増悪生存も全生存も延長
要約
〇多くのがん種で免疫チェックポイント阻害薬として抗PD-1阻害薬や抗PD-L1阻害薬を使用しているが、様々な免疫関連有害事象が報告されている。
〇本研究では複数の免疫関連有害事象と生存、複数の有害事象を認めるリスクについて検討した。
〇2007年から2019年に5つの施設、623例のステージIII/IV非小細胞肺がんに対して免疫チェックポイント阻害薬単剤あるいは複合免疫療法を施行した症例を後ろ向きに解析した。
〇623症例のうち60%が男性、77%が白人、年齢の中央値が66歳、24%で単一の免疫関連有害事象を認め、9.3%で複数の有害事象を認めた。
〇免疫治療単剤による治療で頻度の高い複数有害事象の組み合わせは
-肺臓炎+甲状腺炎 14%
-肝炎+甲状腺炎 10%
-皮膚炎+肺臓炎 10%
-皮膚炎+甲状腺炎 8%
であった。
〇PSが良好であることと、免疫チェックポイント阻害薬を長期に使用していることは複数の有害事象を認める独立したリスク因子だった。
〇単一の有害事象および複数の有害事象と全生存の関連は、有害事象を認めなかった群と比較して
-HR 0.86(95%CI:0.66-1.12、p=0.26)
-HR 0.57(95%CI:0.38-0.85、p=0.005)
無増悪生存期間との関連は
-HR 0.68(95%CI:0.55-0.85、p=0.001)
-HR 0.39(95%CI:0.28-0.55、p<0.001)
という結果だった。
キュート先生の視点
現在、多くの癌種で免疫治療が幅広く使用されておりますが、非小細胞肺がんにおいても5年ほど前から相当数の症例を経験していることと思います。
題名にも書きましたが、免疫治療によって大きな有害事象を認めた症例で大きな効果を認めることをしばしば経験します。
点滴で補液しなければならないような激しい腸炎の後に腫瘍がほぼCR・・・、黄疸が出るような肝炎+胆管炎の後に腫瘍が消失・・・など。
有害事象が起こっている最中は患者さんの状態から目が離せませんが、治療効果としては期待出来ちゃったりします。
中には有害事象で厳しい転帰を辿ってしまう方がいらっしゃいますので、喜んでも居られないのですが、免疫治療と免疫関連有害事象は今後もセットで考えていく必要があります。
以前に仙台厚生病院の戸井先生がJAMA Oncology誌に同様の報告を行っており、非小細胞肺がんに対する免疫治療において自己抗体を有する方、有害事象を認める方の方が効果が高いコトを示しています。
今回はグローバルでの5施設での研究で、実臨床にも大きく参考になるものとして紹介いたしました。
戸井先生、素晴らしい報告いつもありがとうございます。