『Osimertinib for Chinese advanced non-small cell lung cancer patients harboring diverse EGFR exon 20 insertion mutations』(Lung Cancer 2021;152:39)より
まとめ
- EGFR Ex20Ins変異のある非小細胞肺がんに対するオシメルチニブの奏効率は6.5%
要約
〇EGFR エクソン20insertion変異(Ex20ins)のある非小細胞肺がんは第1,2世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬にもともと耐性があるとされる。
〇しかしこのEx20ins症例に対してオシメルチニブの実際の効果があるか捉えられていない。
〇今回、EGFR Ex20ins変異症例に対してオシメルチニブの実際の効果があるか調査した。
〇2017年から2020年までにEGFR Ex20ins変異のある非小細胞肺がんでオシメルチニブ80mgあるいは160mgで治療された症例62例を後ろ向きに解析し、無増悪生存期間PFS、奏効率ORR、病勢コントロール率DCRを評価した。
〇主要なinsertion変異は「D770_N771insSVD」と「V769_D770insASV」で45.1%を占めた。
〇同時にTP53変異が59.7%に認められた。
〇オシメルチニブの効果(best response)は
-部分奏功PR 4例
-病勢安定SD 29例
-病勢増悪PD 29例
であり、奏効率6.5%、病勢コントロール率 53.2%だった。
〇無増悪生存期間の中央値は2.3カ月(95%CI:1.5-3.1カ月)。
〇Ex20ins変異の中でも「A763_Y764insFQEA」(全体の8.06%)と「D770delinsGY」(全体の4.84%)は他のバリアントよりもPFSが長い傾向があった(4.2カ月 vs 2.2カ月、p=0.164)。
〇オシメルチニブで増悪あるいは頭蓋内病変の増悪を認めた症例を見ると、頭蓋内以外での増悪と頭蓋内の増悪で無増悪生存期間は同じようであった(2.3カ月 vs 1.9カ月)。
〇オシメルチニブ80mgと160mgでは無増悪生存の有意な差は認めず、1次治療でオシメルチニブを使用した場合と2次治療以降で使用した場合でも差は認めなかった。
キュート先生の視点
1年に1-2人のEx20ins変異症例で頭を悩ますことがあるので、いつもEx20ins変異の論文は目を光らせています。
そもそも症例数が少ないですので、中国で行われた本研究もサブグループで有意差を出すところまでは至っておりませんが、
-オシメルチニブの用量
-治療ライン
-中枢神経系転移の有無
等では大きな差がなさそうなことは分かりました。
いずれにしてもEGFRのメジャー変異(del19やL858R変異)と比較すると圧倒的に予後が悪いことは分かります。やはり殺細胞性抗がん剤を早いラインで使用して、後々にオシメルチニブを試してみるよりほかないのか・・・と考えさせられました。
6.5%(62例中4例)ではありますがPRを認めた症例も居た、ということもありますので、試してみる価値はありそうですが、フロントラインに持ってくるのは躊躇われる結果と考えます。