キュート先生の『肺癌勉強会』

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【CheckMate9LA】ニボルマブ+イピリムマブ+化学療法2サイクル併用療法は全生存期間を有意に延長

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『First-line nivolumab plus ipilimumab combined with two cycles of chemotherapy in patients with non-small-cell lung cancer (CheckMate 9LA): an international, randomised, open-label, phase 3 trial』(Lancet Oncol 2021, published Jan. 18)より

まとめ

  • 進行非小細胞肺がんの1次治療でニボルマブ+イピリムマブ併用療法に2サイクルのプラチナ併用化学療法の追加で全生存期間が有意に延長

要約

〇進行非小細胞肺がんに対する1次治療としてニボルマブ+イピリムマブ(ニボイピ)併用療法は全生存期間を改善することは示されている。

〇2サイクルの化学療法の追加がこのニボイピ併用療法に臨床的な上乗せ効果があるか調査した。

〇本研究は19の国、103施設で行われた無作為化、オープンラベル、第3相試験である。

〇18歳以上、未治療、組織学的に確定したステージIV/再発非小細胞肺がんでPS0-1の症例が組み込まれた。

〇症例は無作為に1:1で

 -ニボルマブ(360mg、3週毎)+イピリムマブ(1mg/kg、6週毎)+プラチナ併用化学療法(3週毎、2サイクル)群

 -化学療法単独(3週毎、4サイクル)群

に振り分けられた。

〇腫瘍の組織型、性別、PD-L1発現率によって層別化された。

〇主要評価項目は全生存期間とし、安全性は治療された全症例で評価された。

〇結果は主要評価項目が確定した中間解析時と、探索的な長期フォローアップ解析で報告する。

〇2017年8月から2019年1月までに1150例が登録され、719例が試験に組み込まれた。

〇ニボイピ+化学療法併用群に361例、化学療法単独群に358例振り分けられた。

〇フォローアップ期間の中央値9.7カ月での中間解析での全生存期間は

 -ニボイピ+化学療法併用群 14.1カ月(95%CI:13.2-16.2)

 -化学療法単独群 10.7カ月(95%CI:9.5-12.4)

で有意に併用群の全生存期間が延長した(HR 0.69、96.71%CI:0.55-0.87、p=0.00065)。

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[Figure2:全生存期間の生存曲線(上記文献より)]

〇フォロー期間を3.5カ月延長した13.2カ月時点の解析では全生存期間は

 -ニボイピ+化学療法併用群 15.6カ月(95%CI:13.9-20.0)

 -化学療法単独群 10.9カ月(95%CI:9.5-12.6)

だった(HR 0.66、95%CI:0.55-0.80)。

〇奏効率は

 -ニボイピ+化学療法併用群 38.2%

 -化学療法単独群 24.9%

であり、6カ月時での効果を認めている症例の割合は73% vs 45%、12カ月時では49% vs 24%だった。

〇各項目での層別化したサブグループ解析では組織型、肝転移、骨転移、中枢神経系転移、PD-L1発現率に寄らず、点推定値は併用群に寄っていた

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[Figure3:全生存期間のサブグループ解析(上記文献より)]

〇頻度の高いグレード3/4の有害事象は好中球減少(7% vs 9%)、貧血(6% vs 14%)、下痢(4% vs 1%)、リパーゼ上昇(6% vs 1%)、無力症(1% vs 2%)だった。

〇重篤な治療関連有害事象は全グレードで併用群に106例(30%)、化学療法単独群に62例(18%)認めた。

〇治療に関連する死亡は

 -ニボイピ+化学療法併用群 7例(2%)

 -化学療法単独群 6例(2%)

認め、併用群では急性腎不全、下痢、血液毒性、肝炎、肺臓炎、急性腎障害による敗血症、血小板減少がそれぞれ1例ずつの原因であった。

キュート先生の視点

昨年のNEJMに報告されたニボルマブ+イピリムマブ併用療法の『CheckMate227試験』の初期増悪を抑えるため、2サイクルのプラチナ併用療法を追加した『CheckMate9LA試験』の結果が論文化されました。

免疫療法の長期生存効果とプラチナ併用化学療法の切れ味の良いトコ取りしたレジメンですが、Figure2の生存曲線をみますと通して併用療法が上を走っていることが分かります。

初期増悪を抑えるために化学療法を短期間だけ併用するため、殺細胞性抗癌剤の長期的な骨髄抑制や腎機能悪化や体力的に削られる面でも、化学療法と免疫治療を長く継続する従来の複合免疫療法と異なり患者さんに優しいレジメンと捉えることができます。

論文中に示されている、3.5カ月の延長した全生存期間の生存曲線をみても、1.5年以降も2群間は大きく離れており、この『CheckMate9LA試験』が長期にわたって有用であることが分かります。

またサブグループ解析でも組織型、中枢神経系転移、PD-L1発現率に寄らず併用療法が効果を示しているので、比較的幅広い症例に適応があると考えられます。

本研究は第3試験で示された結果で高いエビデンスレベルを誇りますが、既存の複合免疫療法(ケモコンボ)に比べ長期データがないこと、他のケモコンボや『KEYNOTE024試験』でのぺムブロリズマブ単剤と比較したデータではないことは慎重な判断が必要です。

実臨床では、化学療法が長期では投与しにくいけれども切れ味のある効果を期待したい、PD-L1が低発現や無発現であるがケモコンボを活かしたい、などというような症例にはいい適応なのでは、と考えています。