キュート先生の『肺癌勉強会』

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【WJOG9516L】ALK陽性肺がんに対するクリゾチニブ→アレクチニブ逐次治療と初回アレクチニブの比較

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『Sequential therapy of crizotinib followed by alectinib for non-small cell lung cancer harbouring anaplastic lymphoma kinase rearrangement (WJOG9516L): A multicenter retrospective cohort study』(Eur J Cancer 2021;145:183)より

まとめ

  • クリゾチニブ→アレクチニブ逐次治療での複合治療成功期間は初回アレクチニブでの治療成功期間に比べ有意に延長したが、初回アレクチニブに対して全生存の改善効果は示せなかった。

要約

〇実臨床でのALK陽性非小細胞肺がんに対するALK阻害薬の逐次治療のデータは限られている。

〇2012 年 5 月~ 2016 年 12 月までにクリゾチニブあるいはアレクチニブが投与された ALK陽性非小細胞肺がんの臨床データを振り返ってみた。

〇初回化学療法として投与されたALK阻害薬の種類でクリゾチニブ群とアレクチニブ群の2群に分けた。

〇「複合治療成功期間(combined TTF)」はクリゾチニブ群においてクリゾチニブ投与後にアレクチニブを投与した場合のクリゾチニブのTTFとアレクチニブのTTFを足したものと定義した。

〇主要評価項目は複合治療成功期間とアレクチニブ群での治療成功期間の比較とした

〇61施設から864例が登録され、840例が解析された。

〇535例中クリゾチニブ/アレクチニブ群は305例だった。

クリゾチニブ群の複合治療成功期間の中央値は、アレクチニブ群の治療成功期間よりも有意に延長した(34.4カ月 vs 27.2カ月、HR 0.709、p=0.0044)。

〇クリゾチニブ群においてクリゾチニブで治療後にアレクチニブによる治療を受けた症例とアレクチニブ群では、全生存期間に有意差を認めなかった(88.4カ月 vs 未到達、HR 1.048、p=0.7770)。

〇全症例での検討では、クリゾチニブ群がアレクチニブ群よりも全生存期間が有意に短かった(53.6ヶ月 vs 未到達、HR 1.821、p<0.0001)。

〇クリゾチニブ群での複合治療成功期間は初回治療としてアレクチニブを使用した群の治療成功期間と比較して有意に延長したが、初回アレクチニブに対して全生存の改善効果は示せなかった。

キュート先生の視点

松阪市民病院の伊藤先生による多くの肺がん診療に携わる先生方が知りたかったデータ。

今やALK陽性非小細胞肺がんの1次治療はアレクチニブ(アレセンサ®)で誰も疑わないのですが、クリゾチニブ→アレクチニブとシーケンス治療とアレクチニブ単独治療とどっちが効果が高いのか・・・は多くの先生が疑問に思っていたはずです。

「治療成功期間time to treatment failure(TTF)」は治療開始から「全ての理由による治療打ち切り」までの期間のことを意味しますので、より実臨床に即したエンドポイントということができます。

以前の症例でクリゾチニブで治療開始した症例が数多くいらっしゃいましたが、本研究のようなシーケンス治療の全生存の結果を見ると現時点ではアレクチニブファーストが勧められます