『Pembrolizumab Plus Ipilimumab or Placebo for Metastatic Non–Small-Cell Lung Cancer With PD-L1 Tumor Proportion Score ≧ 50%: Randomized, Double-Blind Phase III KEYNOTE-598 Study』(JCO 2021 published Jan. 29 2021)より
まとめ
- PD-L1高発現の未治療非小細胞肺がんに対しぺムブロリズマブにイピリムマブの上乗せ効果は認めなかった。
要約
〇ドライバー変異のないPD-L1発現率50%以上の転移性非小細胞肺がんの1次治療としてぺムブロリズマブ単剤は標準治療となっている。
〇これらの症例に対し、ぺムブロリズマブ+イピリムマブ併用がぺムブロリズマブ単剤による効果を越えられるかは分かっていない。
〇『KEYNOTE598試験』は無作為化、2重盲検化、第3相試験であり、未治療の転移性非小細胞肺がんでPD-L1発現率50%以上でEGFRやALKドライバー変異のない症例と登録し
-ぺムブロリズマブ+イピリムマブ群
-ぺムブロリズマブ+プラセボ群
に1:1に振り分けた。
〇主要評価項目は全生存期間と無増悪生存期間とした。
〇本研究に568例が参加し、284例ずつ各群に振り分けられた。
〇全生存期間の中央値は
-ぺムブロリズマブ+イピリムマブ群 21.4カ月
-ぺムブロリズマブ+プラセボ群 21.9カ月
でハザード比 1.08、95%CI:0.85-1.37、p=0.74と2群間で有意差を認めなかった。
〇無増悪生存期間の中央値は
-ぺムブロリズマブ+イピリムマブ群 8.2カ月
-ぺムブロリズマブ+プラセボ群 8.4カ月
でハザード比 1.06、95%CI:0.86-1.30、p=0.72と2群間で有意差を認めなかった。
〇グレード3-5の有害事象は
-ぺムブロリズマブ+イピリムマブ群 62.4%
-ぺムブロリズマブ+プラセボ群 50.2%
に認めた。
〇死亡した症例はそれぞれ13.1%、7.5%であったが、治療関連有害事象はぺムブロリズマブ+イピリムマブ併用群で7例(2.5%)に認め、心筋炎、副腎不全、胆石性黄疸、病勢増悪、リンパ球性下垂体炎、肺臓炎であり、ぺムブロリズマブ+プラセボ群は1例も認めなかった。
〇本研究は安全性監視委員会により研究を中止しイピリムマブとプラセボを中止することを推奨することとなった。
キュート先生の視点
本研究は先日の世界肺癌学会で報告された内容が論文化されました。
PD-L1高発現の症例に対してはぺムブロリズマブ単剤が効果も安全性も高く、抗PD-1抗体であるぺムブロリズマブ単剤に抗CTLA-4抗体であるイピリムマブの追加で上乗せ効果は認めない結果でした。
最新の『肺癌診療ガイドライン』では同じ抗PD-1抗体であるニボルマブにイピリムマブを追加する併用療法が掲載されておりますが、このような報告を見ると免疫治療の「IO-IO併用療法」は慎重に行わざるを得ないと思います。