『Updated Integrated Analysis of the Efficacy and Safety of Entrectinib in Locally Advanced or Metastatic ROS1 Fusion–Positive Non–Small-Cell Lung Cancer』(JCO 2021, published on Mar. 1)より
まとめ
- ROS1再構成陽性非小細胞肺がん対してエヌトレクチニブの奏効率は67.1%
要約
〇「ROS1」は非小細胞肺がんの発がん性のドライバー変異です。
〇今回ROS1阻害薬であるエヌトレクチニブのROS1再構成のある非小細胞肺がんに対して使用した3つの第1/2相臨床試験『ALKA-372-001試験』『STARTRK-1試験』『STARTRK-2試験』のアップデート中間解析の結果を報告する。
〇局所進行/転移性ROS1再構成陽性の非小細胞肺がんを含む効果評価群に対してエヌトレクチニブ600mg以上が毎日経口投与された。
〇主要評価項目は独立評価委員会が評価した奏効率ORRと奏功期間DoRとした。
〇副次評価項目としては無増悪生存期間PFS、全生存期間OS、頭蓋内奏効率、頭蓋内奏功期間、頭蓋内無増悪生存期間、安全性とした。
〇6カ月以上フォローされた161例を評価した。
〇治療期間の中央値は10.7カ月(IQR 6.4-17.1カ月)。
※IQR:四分位範囲 interquartile range
〇奏効率ORR 67.1%(95%CI:59.3-74.3)
〇奏功期間は12カ月時で奏功が得られている症例が63%、奏功期間の中央値 15.7カ月であった。
〇12カ月時での無増悪生存率は55%、無増悪生存期間の中央値は15.7カ月。
〇12カ月時での全生存率は81%、全生存期間の中央値は未到達であった。
〇24例で試験開始時に測定可能な頭蓋内病変を持っていたが、
-頭蓋内奏効率 79.2%(95%CI:57.9-92.9)
-頭蓋内無増悪生存期間 12.0カ月(95%CI:6.2-19.3カ月)
-頭蓋内奏功期間 12.9カ月
-12カ月時で頭蓋内の奏功が得られている症例 55%
だった。
〇安全性プロファイルは最初の解析と同等で、特に新しい安全性の警鐘はなかった。
キュート先生の視点
ちょうど半年ほど前に『Lancet Oncology』誌にエヌトレクチニブの最初の解析結果が掲載されました。
その結果はROS1陽性非小細胞肺がんに対するエヌトレクチニブの奏効率は77%という結果でした。今回観察期間を延ばしての解析で、よりその効果がハッキリしてきました。
昨年「ROS1融合遺伝子陽性進行/再発非小細胞肺がん」に対してエヌトレクチニブ(ロズリートレク®)が適応追加になり、最新版『肺癌診療ガイドライン』でも推奨が追加されています。
ROS1融合遺伝子は肺腺がんにおいて約2-3%に認められるドライバー遺伝子変異(Transl Lung Cancer Res 2015;4:156)です。ROS1陽性非小細胞肺がんは脳転移の頻度が高いドライバー変異(JTO 2018;13:1717)であることも分かっています。
今回の報告のように全身の高い奏効率が示されたことも重要ですが、頭蓋内奏効率も高く保たれていることも、肺がん診療を行っていく上で力強い武器であると考えることができます。