『Effect of Second-generation vs Third-generation Chemotherapy Regimens With Thoracic Radiotherapy on Unresectable Stage III Non–Small-Cell Lung Cancer. 10-Year Follow-up of aWJTOG0105 Phase 3 Randomized Clinical Trial』(JAMA Oncol 2021, published Online Mar.18, 2021)より
まとめ
- 切除不能III期非小細胞肺がんでの10年生存率は第2世代、第3世代抗がん剤でのプラチナ併用化学療法+放射線治療で有意差なし
要約
〇『WJTOG0105試験』は多施設、第3相、無作為化試験として2001年から2005年に本邦で行われた臨床試験です。
〇組織学的に非小細胞肺がんと診断された切除不能ステージIIIの症例が集められ、
〇今回10年フォローアップデータとして解析されました。
〇440例の症例は無作為に
A群146例:マイトマイシン+ビンデシン+シスプラチン +胸部放射線60Gy
B群147例:イリノテカン+カルボプラチン +胸部放射線60Gy
C群147例:パクリタキセル+カルボプラチン +胸部放射線60Gy
に分けられ、比較検討されました。
〇主要評価項目は化学放射線治療後の10年生存率です。
〇副次評価項目は化学放射線開始後90日以上で起きた晩期毒性としました。
〇フォローアップ期間の中央値は11.9年(7.6-13.3年)。
〇全生存期間の中央値は
A群:20.5カ月(17.5-26.0カ月)
B群:19.8カ月(16.7-23.5カ月)
C群:22.0カ月(18.7-26.2カ月)
であり、10年生存率は13.6%、7.5%、15.2%で各群に差を認めませんでした。
〇10年無増悪生存率は8.5%、6.5%、11.1%でした。
〇グレード3/4の晩期毒性は3.4%、3.4%、4.1%に認められました。
キュート先生の視点
がんセンター東病院の善家先生からの報告です。
『WJTOG0105試験』は2010年に第2世代の化学療法と言われていたMVP試験(A群)に対して第3世代のイリノテカンやパクリタキセルが非劣性を証明されなかったと報告された臨床試験(JCO 2010;28:3739)です。
III期非小細胞肺がんの治療で重要なのは手術が可能か、根治的放射線照射が可能か、ということです。もし手術が不可能で根治的放射線照射が可能であれば、最新の『肺癌診療ガイドライン2020年版』では化学放射線療法+デュルバルマブ維持治療が標準治療となります。
ただ自分の外来にも以前II期やIII期肺がんと診断され、本研究のような第3世代抗がん剤を含むプラチナ併用化学療法+放射線治療後に延々と経過観察している方は数名いらっしゃることは確かです。そのような方々にも大変支えとなり、粘り強いデータが発表されたことを嬉しく思ってここに取り上げさせて頂きました。
10年ってすごいなぁ・・・