キュート先生の『肺癌勉強会』

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【Medical Tribune 連載第37回目】PD-L1高発現ってEGFR陽性肺がんでは予後不良因子?

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『Relationship between PD-L1 expression and outcome in EGFR-mutant lung cancer patients treated with EGFR tyrosine kinase inhibitors』(Lung Cancer 2021;155:28)より

医療情報サイト『Medical Tribune』に論文レビューを寄稿しました。

キュート先生の視点

この研究はオーストラリアからの報告で、

EGFR遺伝子変異の有無とPD-L1 TPS(発現率)の関係について検討した研究です。

実臨床では肺がんの診断時にPD-L1 TPSとドライバー遺伝子変異について

確認することが一般的です。

ドライバー遺伝子変異が陽性であればPD-L1発現率は

あまり気にしないことが多いかと思います。

この研究ではPD-L1 TPS 50%以上群は49%以下群に比べて

EGFR-TKIによる無増悪生存期間も全生存期間も短かったという結果。

つまり、

 EGFR陽性非小細胞肺がんではPD-L1 TPS高発現は予後不良因子

と言い換えることができます。

現在、EGFR変異陽性非小細胞肺がんの一次治療において

第三世代EGFR-TKIであるオシメルチニブは本研究では使用されていません。

一次治療でのオシメルチニブの効果を検討した第Ⅲ相試験FLAURAでは、

PD-L1陽性例(1%以上)と陰性例でPFSは同等の結果であり、

3.6%に認めたとされるPD-L1高発現例での効果は発表されていません。

今回の臨床試験は2013~19年の症例での解析であり、

 

 ①第三世代EGFR-TKIが含まれていない

 ②日本でPD-L1の解析に用いられることの多い「22C3」でなく「SP263」で評価されている

 ③EGFR-TKI増悪後の解析では24例と少数例である

 

などの点から現状に全てを当てはめられない研究ではあります。

やはりドライバー遺伝子変異が陽性である場合には

PD-L1が高発現であったとしても、もちろん第一選択はキナーゼ阻害薬であり、

当然ではありますが免疫治療ファーストではいけません。