『Real-World Evaluation of Factors for Interstitial Lung Disease Incidence and Radiologic Characteristics in Patients With EGFR T790M– positive NSCLC Treated With Osimertinib in Japan』(JTO 2020;15:1893)より
まとめ
過去のニボルマブ投与歴や間質性肺炎のある症例に対するオシメルチニブ投与は間質性肺炎の発症に注意
要約
〇日本のリアルワールドデータにおいてEGFR陽性非小細胞肺がん症例に対する2次治療以降のオシメルチニブの投与によって間質性肺炎を引き起こした症例の特徴を調べた。
〇間質性肺炎を引き起こした画像検査を後ろ向きに解析した。
〇3578例のうち、245例(6.8%)、252回の間質性肺炎のイベントが報告された。
〇オシメルチニブ投与後に間質性肺炎が起こるまでの時間の中央値は63日(5-410日)。
〇間質性肺炎を起こした245例中29例(11.8%)で死亡との報告だった。
〇間質性肺炎の専門家委員会では3578例中231例(6.5%)で間質性肺炎だったとの評価だった。
〇過去のニボルマブによる治療歴(OR 2.84)と間質性肺炎の既往歴や現病歴(OR 3.51)はオシメルチニブ治療による間質性肺炎の発症と関連していた。
〇過去のニボルマブによる治療を受けていた症例において、オシメルチニブ投与前1か月以内にニボルマブを中止した症例が症例数も割合も高く、ニボルマブによる治療とオシメルチニブの投与の感覚が離れれば間質性肺炎の割合は減少する傾向にあった。
キュート先生の視点
これは肺癌の実臨床において大事な論文。
オシメルチニブの投与によって間質性肺炎を引き起こした症例の約10%は死亡の転帰を辿ってしまうことや、過去にニボルマブによる治療歴のある症例や間質性肺炎の既往のある症例がオシメルチニブの投与によって間質性肺炎を引き起こしてしまうことなどは実臨床でも大事な情報です。
特にニボルマブを含めた免疫治療投与中止後1か月でのオシメルチニブは注意が必要です。
EGFR遺伝子変異を含むドライバー変異陽性例に対する免疫治療はそもそもエビデンスが少なく、現場の臨床の先生の感覚的なところがあります。とはいえ、ドライバー変異陽性の肺癌症例に対して、肺がん治療のキードラッグであります免疫治療を投与しないわけにはいきません。
ドライバー変異陽性の症例では後治療になってもTKIの投与やリチャレンジを行うこともありますので、免疫治療の出番は最後の最後、2ndあたりに強力に1度だけ使って、後は殺細胞性抗癌剤とTKIで最後まで粘る、のような使い方になるのかな、と思っています。多くの先生のご意見をお待ちしております。