キュート先生の『肺癌勉強会』

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【進行肺がんにオペ?】進行期EGFR陽性肺腺がんに対するTKI治療後の手術は予後を延ばす

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『Thoracic surgery improved overall survival in patients with stage IIIB–IV epidermal growth factor receptor-mutant lung adenocarcinoma who received and responded to tyrosine kinase inhibitor treatment』(Lung Cancer 2021;162:29)

まとめ

EGFR遺伝子変異陽性の手術不能IIIB-IV期肺腺がんにおいてEGFR-TKI治療後の手術療法は全生存期間を延長する。

 

要約

〇ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブで少なくとも3カ月治療を受けた手術不能IIIB-IV期EGFR陽性非小細胞肺がん症例で、EGFR-TKIで治療後に胸部手術療法を受けた群290例と病勢増悪までEGFR-TKIで治療を継続した群10828例を比較検討した。

〇プロペンシティスコアマッチングでマッチした手術群279例とTKI単独治療群1116例のあわせて1395例を解析の対象とした。

〇両群のフォローアップ期間の中央値は

 -手術群 4.86年

 -TKI単独治療群 3.73年

であり、その期間中での死亡イベントは

 -手術群 79例/279例中(28%)

 -TKI単独治療群 541例/1116例中(48%)

であった。

5年生存率は

 -手術群 39.8%

 -TKI単独治療群 22.0%

であった。

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[Fig1:EGFR陽性肺腺がんに対するEGFR-TKI治療後の手術療法とTKI単独治療群の全生存期間(上記文献より)]

 

〇年齢別解析でも、病期別解析においても手術群が予後良好であったが、65歳以上の高齢者群の方が65歳未満の若年者群よりも手術がより予後良好に関連した。

 

キュート先生の視点

「進行肺がんにオペ???」…ということで、興味深く本研究を読ませて頂きました。

手術不能なIII/IV期に対する手術療法は実臨床ではほぼ行われておりません。腫瘍があることによりどうしても局所で問題が起きている場合、脳表や小脳に転移性脳腫瘍が認められるような場合など特殊な状況下に限るかと思われます。根治的化学放射線療法や根治的放射線治療の後に局所に肺がんが残存する場合に、「サルベージ手術」と呼ばれる局所治療が行われることがありますが、本研究はそもそも根治的治療が可能な病期ではありません。

本研究ではEGFR陽性の進行肺腺がん症例に対して、EGFR-TKIで3カ月治療し、その後に局所的に手術を行って予後を検討した研究になります。EGFR遺伝子変異に限った報告でもありますし、EGFR-TKIで反応が無かった症例はプロペンシティマッチングで除外されておりますし、そもそも手術が不可能な症例は含まれていないことは差し引いて考える必要があります。ただ、初回EGFR-TKI治療で大きく反応し、手術可能な状況に腫瘍が縮小するような場合には「サルベージ」と考えていいかどうかは分かりませんが、手術療法も1つの選択肢になりうるのかもしれません。

実臨床では、原発巣を手術で切除してしまいますと、その後の画像フォローに関して評価しづらくなるデメリットがあります。ただし大きく予後が改善する本研究の結果を見てしまうと、EGFR-TKI治療後に反応が良好であれば外科的切除を検討せざるを得ません。

 

現時点では「肺癌診療ガイドライン」にも進行期非小細胞肺がんの治療後の手術に関しては記載がありませんので、本研究の結果をもって外科の先生に手術をお願いしまくるのはくれぐれも注意されたいところ