※この記事はMedical Tribune内の『Oncology Tribune』に寄稿した記事のリライトになります。
Association Between Body Mass Index and Overall Survival With Immune Checkpoint Inhibitor Therapy for Advanced Non–Small Cell Lung Cancer(JAMA Oncol 2020;6;512)
肺がんの一般的な治療に免疫チェックポイント阻害薬(ICI)、いわゆる「免疫治療」が一般的に使用されるようになってからもう数年が経とうとしています。
肺がんに対する免疫治療の効果予測因子として「PD-L1発現率(PD-L1 TPS)」が実臨床では調べられていますが、それ以外にもPS、腫瘍量、好中球リンパ球比などが言われています。
進行非小細胞肺癌に対するAtezolizumab(テセントリク)の2次治療での効果を見たPOPLAR試験とOAK試験、そして単アーム試験のBIRCH試験とFIR試験の4つの臨床試験からBMIとICIの効果を検証した研究がありましたので紹介します。
悪性黒色腫に対するICI治療ではBMI高値が全生存と独立した予後因子であることが分かっています(Lancet Oncol 2018;19:310)。肺がんではBMIとICIの効果を検証したデータがないということで今回の解析がなされました。
先に示した4つの臨床試験において、1434例のアテゾリズマブ投与群(男性 62%、年齢中央値64歳)と、676例のドセタキセル投与群(男性62%、年齢中央値63歳)の比較です。
ドセタキセル群ではBMIによって生存曲線に差を認めませんが、アテゾリズマブ治療群におけるPD-L1陽性群ではBMI>30(肥満)のグループが長期生存が得られていることが分かります。
もちろん全ての癌腫で「肥満」が免疫治療における効果良好因子ではなく、乳癌では逆にリスクがむしろ増加するとされています。また肥満はT細胞の機能異常や疲弊(exhausted)リンパ球を増やす可能性も示唆されており、肥満で全生存が延長する詳細な機序については今後の検討課題と考えられます。