医療情報サイト「メディカルトリビューン」さんの連載「みんなで肺がん注目論文 徹底検証しちゃいました」の紹介です。この企画は肺がん診療に重要な論文を、第一線で活躍される先生方とわたくしキュート先生で徹底的に検証しよう、という内容になっています。
連載第10回目は論文の筆頭著者で静岡県立静岡がんセンター呼吸器内科医長の釼持 広知 先生に解説を頂きました。
NSCLC術後補助療法としてのアテゾ 日本人サブ解析は?
Adjuvant atezolizumab in Japanese patients with resected stage IB-IIIA non-small cell lung cancer (IMpower010)(Cancer Sci 2022;113:4327)
『IMpower010試験』は
ⅠB~ⅢA期の完全切除後の非小細胞肺がんNSCLCで
術後化学療法を施行した症例群を対象とし、
術後補助療法のアテゾリズマブの有効性と安全性を検証した
国際第Ⅲ相ランダム化比較試験。
1,280例がシスプラチン併用術後化学療法を1~4サイクル投与後、
術後補助療法としてアテゾリズマブ1,200mgを21日間隔で
最長16サイクルまたは1年投与するアテゾリズマブ群(507例)
またはBSC群(498例)に割り付けられた。
日本人患者は国内24施設で149例が登録され、
ITT集団は117例(アテゾリズマブ群59例、BSC群58例)
Ⅱ~ⅢA期のランダム化された全患者集団は113例
PD-L1発現を認めたⅡ~ⅢA期集団は74例(同41例、33例)。
DFS中央値は、PD-L1 TC 1%以上のⅡ~ⅢA期集団において、
BSC群の31.4カ月、アテゾリズマブ群では未到達と改善傾向が示された。
日本人は149例が含まれており、PD-L1陽性のⅡ~ⅢA期集団でのDFS、Ⅱ~ⅢA期の全集団でのDFS、ITT集団でのDFSが順に評価されました。症例数は限られておりますので、日本人データのみで有意差を示すことはできませんでしたが、いずれの集団においてもDFSは改善傾向にあることは論文から読み取れます。
実臨床の現場を想像してみた時に注意すべきは、完全切除(R0切除)と考えられるⅠB~ⅢA期の症例に対して3週間ごと16サイクルの約1年間、抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブを投与し続ける必要があることです。EGFR変異陽性NSCLCの術後アジュバント治療としてのオシメルチニブの効果を検証した「ADAURA試験」でも同様のことが指摘されていますが、評価病変がなく時としてアジュバント治療が不要かもしれない症例に対しても、副作用や免疫関連有害事象に細心の注意を払いながらフォローする必要があります。
「CheckMate-816試験」のような、手術前の免疫治療も今後選択肢の1つになりうる可能性もあり、今後、周術期の治療選択肢が幅広くなることは間違いありません。いずれにせよ、内科医と外科医が密に連携を取って周術期管理を行う仕組みづくりが今後はさらに重要な課題と考えます。
ぜひ剱持先生の実臨床に沿った適格なコメントと徹底検証を
多くの肺癌診療に携わる医療者に読んで頂きたいと思っています。