キュート先生の『肺癌勉強会』

肺癌に関連するニュースや研究結果、日常臨床の実際などわかりやすく紹介

【書評】どんなにツラくても…誰かが見守っている 『ハルカと月の王子さま』

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絵本『ハルカと月の王子さま』

いつぞやのテレビ番組でX JAPANのTOSHIが曲をカバーしているのを聴いてから

音楽ユニット「YOASOBI」さんの曲をよく聴いています。

そのYOASOBIさんの楽曲『ハルカ』の原作小説が絵本になりました。

 

小説はあの鈴木おさむさんの『月王子』が書き足され、

イラストレーター 伊豆見香苗さんによって絵本に仕上げりました。

 

どんなにツラくても誰か見守っているよ…

ハルカちゃんの成長する過程が月の王子さまの視点で描かれており、

絵本とは思えない感動のストーリー。

 

このコロナ禍で多くの人がツラい気持ち、苦しい思いをしています。

 

人は生きていく中で多くの別れがありますが、

そんな中でも心や気持ちは常につながっています。

 

人は孤独で一人で淋しくツラい状況でも、

どこかで必ず誰かが見守っています。

 

どんなにツラい気持ち、苦しい思いをしても、

一人で、孤独で、淋しい思いをしても、

心がつながっていて、誰かに見守られていれば、

 

人は幸せになれる。

 

人は元気になれる。

 

…そんなメッセージが込められています。

 

短い時間で心に刺さる感動ストーリー

絵本ですので、どんなに読書が苦手な人でも、

文章が読むのが得意でない人でも、

10分もあれば読むことができます。

 

昔から大事にしていたモノや

今近くに居る人がさらに愛おしくなる感動ストーリー。

 

このコロナ禍のツラい状況で

多くの人に読んで欲しい絵本『ハルカと月の王子さま』の紹介でした。

タバコを全く吸ったことがない人と比べ過去喫煙者・現喫煙者では生涯で肺がん発症リスクが上昇

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『Estimating lifetime and 10-year risk of lung cancer』(Preventive Medicine Reports 2018;11:125)より

まとめ

  • 全くタバコを吸ったことがない人と比べ過去喫煙者、現喫煙者では生涯で肺がんを発症するリスクが上がる。

キュート先生の視点

西スイスの約112万4000人、スイス人口の約13%に当たる人数で行われた研究です。性別や喫煙の状況を推計し、生涯で起こる肺がんの発症リスクがまとめられました。

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[図1:性別・年齢別 肺がん発症リスク]

[図1]から肺がん発症は男女共に年齢が上がれば肺がん発症リスクが上がることが分かります。50-60歳ごろから急峻にグラフが立ち上がってくることが読み取れます。

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[図2:喫煙状況別 肺がん発症リスク]

[図2]では現喫煙者(current smokers)、過去喫煙者(former smokers)、非喫煙者(never smokers)に分けて年齢別に肺がん発症リスクを見たグラフです。喫煙者では40歳ごろから急にグラフが男女ともに上がっていることが分かりますが、非喫煙者ではグラフは平坦でその違いが一目瞭然です。

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[図3:男女別・年代別 生涯肺がん発症リスク]

[図3]では男女別・データ集積した期間別に生涯での肺がん発症リスクを見たグラフです。現喫煙者・過去喫煙者・非喫煙者で生涯の肺がん発症リスクが一目瞭然に違うことが分かります。

 

考えれば当たり前のデータではありますが、明らかに目で見て分かるグラフに驚きました。多くの意見があるかと思いますが、医療者もそうでない方も、タバコを吸っている方も以前吸っていた方も、全く吸っていない方も、各自で考えて頂ければと思っています。

【お知らせ】肺がんのYouTubeライブ『肺がん治療の軌跡』やります!

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YouTubeライブ『肺がん治療の軌跡』やります!

動画で分かりやすい医療情報を発信している

「YouTubeクリニック」東大 放射線治療科 上松正和先生にお声掛け頂き

YouTubeライブを行うことになりました。

 

日時:2021年2月22日(月)21:00-

 

内容:「肺がん治療の軌跡」

●肺がんの一般的知識

●肺がん治療の変遷と軌跡

●わたくしが医療情報発信をする理由

などなど、非医療者でも分かるようにかみ砕いてお話しする予定です。

 

▼下記リンクから誰でも無料で見ることができます▼

今年は音声・動画発信も積極的に行っていきたいので上松先生に感謝です。

当日、皆さまにお会いできるのをとても楽しみにしています。

 

▼「YouTubeクリニック」▼

【EMPOWER-Lung1】PD-L1 50%以上の非小細胞肺がんに対する抗PD-1抗体の効果

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『Cemiplimab monotherapy for first-line treatment of advanced non-small-cell lung cancer with PD-L1 of at least 50%: a multicentre, open-label, global, phase 3, randomised, controlled trial』(Lancet 2021;397:592)より

まとめ

  • PD-L1 50%以上の非小細胞肺がんに対する抗PD-1抗体であるセミプリマブは全生存も無増悪生存も有意に改善

要約

〇PD-1抗体であるセミプリマブのPD-L1発現率50%以上の進行非小細胞肺がんの1次治療について評価した。

〇『EMPOWER-Lung1試験』は多施設、オープンラベル、国際第3相試験で、24の国、138施設から18歳以上、組織学的/細胞診的に確定した進行非小細胞肺がんでECOG-PS 0-1、非喫煙者の症例が集められた。

〇症例は1:1に

 -セミプリマブ 350mg、3週毎

 -プラチナ併用化学療法

に振り分けられた。

〇病勢増悪を認めたら、化学療法群からセミプリマブ群へクロスオーバーが認められた。

〇主要評価項目は全生存期間と無増悪生存期間とし、ITT集団とPD-L1発現率50%以上の集団で評価された。

〇有害事象は少なくとも1回以上治療薬が投与された全症例で評価された。

〇ITT集団として710例が登録され、PD-L1発現率50%以上の症例は563例だった。

〇ITT集団での全生存期間の中央値は

 -セミプリマブ群 未到達(95%CI:17.9-未到達)

 -プラチナ併用化学療法群 14.2カ月(95%CI:11.2-17.5カ月)

だった(HR 0.57、p=0.0002)。

〇無増悪生存期間の中央値は

 -セミプリマブ群 8.2カ月(95%CI:6.1-8.8カ月)

 -プラチナ併用化学療法群 5.7カ月(95%CI:4.5-6.2カ月)

だった(HR 0.54、p<0.0001)。

〇74%と高いクロスオーバー率だったにもかかわらず、ITT集団での全生存も無増悪生存もセミプリマブは有意差をもって改善した。

〇グレード3-4の有害事象はセミプリマブで治療された355例中98例(28%)、化学療法群の342例中135例(39%)で報告された。

キュート先生の視点

現在の『肺癌診療ガイドライン2020年度版』では「PD-L1発現率」や「ドライバー遺伝子変異」によって治療戦略を考えています。

特に「PD-L1発現率」が50%以上ですとぺムブロリズマブ単剤(キイトルーダ®)が高い効果を示すことが分かっておりガイドラインでも推奨されています。

ただ、最近の肺がんの実臨床ですと、PD-L1発現率はあまり参照せずに「複合免疫療法」を1次治療に選択することも多く、医療機関や治療を検討する医療者によって意見が分かれることもあるかと思っています。

今回のセミプリマブは日本では未承認の薬剤ですが、この『EMPOWER-Lung1試験』の結果を見ても、やはりPD-L1高発現の場合には「PD-1」単剤治療は個人的にはアリかな、と思っています。

病勢が強く後治療でプラチナが入りにくい症例や、治療失敗が許されないような差し迫った症例に対しては「複合免疫療法」が望ましいことは言うまでもありませんが、化学療法と免疫療法の療法の副作用管理は慎重に行う必要があります。

がん患者さんに対する新型コロナワクチン

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ワクチンについて

ワクチンとは、人工的に人の身体の中に免疫/抵抗力を作り出すことです。

人の体は、例えば麻疹(はしか)という病気があります。

通常は小さい頃にかかって熱が出たり、発疹が出たりする病気ですが、

一度かかって自然に治ると麻疹にかからない身体になります。

これは身体に麻疹に対する抵抗力ともいうべき「免疫」ができるからです。

病原体そのものや、病原体を構成する物質をもとに作った

ワクチンを接種して抵抗力をつけることで病原体に感染する代わりをします。

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1.生ワクチン

「生ワクチン」は病原性を弱めた病原体からできています。

接種すると病気にかかった時とほぼ同じ免疫がつくことが期待できます。

副反応として病気にかかった時のような症状が出ることがあります。

感染と言っても、多くは軽い症状で済みます。

MRワクチン(麻疹・風疹)、水痘(みずぼうそう)ワクチン、おたふくかぜワクチンなどがあります。

2.不活化ワクチン/組み換えタンパクワクチン

感染力を無くした病原体や病原体を構成するタンパクからできています。

1度接種しただけでは必要な免疫を獲得するコトができないため

複数回の接種が必要となります。

4種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ)、2種混合(ジフテリア・破傷風)、日本脳炎のワクチンがそうです。

インフルエンザのワクチンもこの種類のワクチンになります。

3.mRNAワクチン・ウイルスベクターワクチン

このワクチンはウイルスを構成するタンパクの遺伝情報を投与します。

これらの設計図ともいうべき遺伝情報をもとに

体の中にウイルスの一部のたんぱく質を作り出すことで

人の体の中に免疫が作られます。

今回日本で接種予定となっているワクチンは、新型コロナウイルスの表面の

一部分を身体に作り出すことで免疫を作りだすタイプのワクチンです。

ファイザー社とモデルナ社のワクチンはmRNAワクチン。

アストラゼネカ社のワクチンはウイルスベクターワクチンという種類です。

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ワクチンの有効性

これまで世界中で行われた臨床試験の結果から、

新型コロナウイルスに対するワクチンの有効性は

 

 -ファイザー社mRNAワクチン 95%

 -モデルナ社mRNAワクチン 94%

 -アストラゼネカ社ウイルスベクターワクチン 90%(低用量→標準量)

 -アストラゼネカ社ウイルスベクターワクチン 60%(標準量→標準量)

 

となっています。(NEJM 2020;383:2603, NEJM 2021;384:403, Lancet 2021;397:99)

 

ここで示されたワクチンの有効性は

 

ワクチンを打たなかった人の発症率より、

接種した人の発症率が95%少なかった

 

という意味です。

 

発症リスクが1/20になったとも言い換えることができます。

がん患者と新型コロナウイルス感染症

過去の報告から一般的にがん/悪性腫瘍を患っている患者さんは

新型コロナウイルス感染症のリスクと言えます。

しかもコロナに感染した後の重症化の割合も

がんのない方に比べると高いという報告が多くみられます。

ただし抗がん剤・放射線治療・免疫治療などがんの治療の種類や

がんの状態による感染リスクや重症化リスク・死亡リスクは

報告によって結果がまちまちです。

様々な報告がありますが、がん自体が寿命や死亡リスクと関連しております。

治療に差し障りのある新型コロナ感染は防ぐに越したことはない、

と考えることができます。

がんと新型コロナワクチン

上記に挙げた新型コロナワクチンの臨床試験でも、

がん症例に絞って効果や副反応がどうだったかという結果はありません。

試験によっては抗がん剤などで免疫が抑えられているような方は、

臨床試験からそもそも除外されています。

ただ、日本の内閣官房や厚生労働省の優先接種の方の中に「持病のある方」が

あり、その中に免疫が抑えられる可能性のあるがんが含まれます。

臨床試験でもワクチン接種群で約21%の方が何かの持病を持っていた方に

接種がなされています。

ただ一般的な注意として免疫抑制剤や抗がん剤で

極めて免疫が低下している方の接種に関しては

主治医の先生とよく相談する必要があると考えます。

 

イギリスの「Cancer Research UK」では治療ごとにもコメントがなされており、

-免疫治療を受けている場合には、免疫治療により自身の免疫が賦活化している可能性がありますので、副反応が強く出る可能性があります。ただ十分なエビデンスがありません。

-殺細胞性抗がん剤治療中の場合には、一般的にワクチン接種はいつでも可能と考えられますが、治療スケジュールに差し障りの内容に予定を組む必要があります。

-放射線治療や手術療法でもワクチン接種は推奨されます。

 とされています。

今後、日本でも臨床腫瘍学会や各がん種の専門学会、内閣官房や、厚生労働省から指針が出されるかと考えますので、注目していきます。

わたくしも携わっている『コロワくんサポーターズ』でも

がん/悪性腫瘍と新型コロナワクチンについては注視していきます。

▼『コロワくんサポーターズ』は皆様からのクラウドファンディングで成り立っております▼