キュート先生の『肺癌勉強会』

肺癌に関連するニュースや研究結果、日常臨床の実際などわかりやすく紹介

【書評】赤本・青本!リニューアルされた『総合内科病棟マニュアル』内科医必携の2冊組。

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『総合内科マニュアル』大幅リニューアル!

『総合内科病棟マニュアル』が大幅にリニューアルして帰ってきました。

「赤本」と呼ばれる「病棟業務の基礎」編に続き

「青本」と呼ばれる「疾患ごとの管理」編を手に入れました。

 

実際に2週間ほど、白衣のポッケに入れながら病棟業務に活用してみました。

 

内科全般 幅広い疾患が網羅

まず感じたメリットとして、幅広い疾患が網羅されていることにあります。

このコロナ拡大下において、呼吸器や感染症診療のほか、

一般的な内科の知識や感染症・感染対策・救急対応などの

幅広い内科としての対応が求められる時代です。

各分野の多岐にわたるガイドラインや重要なエビデンスが

1冊にまとめられており、目の前の患者さんの管理に活かすことができます。

 

活用できる具体的な対応例

2つ目のメリットとして、

具体的な対応例や処方例が記載されていることが挙げられます。

自分の専門にする、わたくしであれば呼吸器に当たりますが、

専門分野の薬剤や治療ストラテジーは概ね経験しており頭に入っています。

ただ少し専門から離れてしまうと、薬剤選択や検査に

自信が持てなくなってしまうことがあります。

そのような状況の時にこの本が自分の足りないところを

補完するような頼りになる相棒として活躍します。

 

2冊併せて最強の2冊組

3つ目のメリットとしては、先に出版された「赤本」と併せて

内科病棟管理の最強の2冊組と考えることができます。

「赤本」は病院で働く上での心得がびしっと書かれており、

大変納得できますし、指導医の立場でも勉強になりました。

2冊目の「青本」は疾患ごとの管理でキレイにまとめられており、

2冊併せて最強の組み合わせ…と思えます。

 

内容があまりに重厚なため、「赤本」が約500ページ、

「青本」が約800ページとなっており、

白衣のポッケが本を入れている側に片寄ってしまうことが難点。

片寄っている白衣のドクターを見たら、

それは内科病棟管理が一つ上のステージに立っている先生です。

 

ぜひ2冊組で手に取って欲しい、

2021年で1番おススメの内科全般をカバーする医学書でした。

【CHRYSALIS】ついに!EGFRエクソン20挿入変異に対するアミバンタマブの奏効率は40%!

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Amivantamab in EGFR Exon 20 Insertion–Mutated Non–Small-Cell Lung Cancer Progressing on Platinum Chemotherapy: Initial Results From the CHRYSALIS Phase I Study(JCO, published on Aug. 2, 2021)より

まとめ

  • EGFRエクソン20挿入変異陽性の非小細胞肺がんに対するアミバンタマブの奏効率は40%

要約

〇エクソン20挿入変異(Ex20ins)陽性非小細胞肺がんは、今まで承認されたEGFRチロシンキナーゼ阻害薬に対して固有の耐性を持つ。

〇EGFR/MET二重特異性抗体で免疫活性のあるアミバンタマブはそれぞれのチロシンキナーゼ阻害薬の結合部位での耐性をバイパスするような細胞外ドメインに結合する。

〇『CHRYSALIS試験』はEx20ins変異陽性非小細胞肺がん症例を含む、オープンラベル、第1相試験、用量漸増試験と用量拡大試験である。

〇主要評価項目は用量規定毒性と奏効率とした。

〇プラチナ併用療法治療後のEGFR Ex20ins変異陽性の非小細胞肺がん症例で第2相試験の用量のアミバンタマブ1050mg(80kg以上は1400mg)を最初の4週間は1週間毎投与、5週目以降は2週間毎に投与された。

〇効果を見るための81例の症例群では、年齢の中央値は62歳、49%はアジア人、過去の治療レジメン数の中央値は2レジメンだった。

奏効率は40%(95%CI:29-51%)であり、3例のCRを含んでいる。

〇奏功期間の中央値は11.1カ月(95%CI:6.9-未到達)であった。

〇無増悪生存期間の中央値は8.3カ月(95%CI:6.5-10.9カ月)であった。

〇安全性を見るための114例の症例群では、最も頻度の高い有害事象は

 -皮疹 86%

 -infusion reaction 66%

 -爪囲炎 45%

であった。

〇最も頻度の高いグレード3/4の有害事象は5%で高カリウム血症、皮疹、肺塞栓症、下痢、好中球減少症が4%ずつで認められた。

〇治療関連で用量減少や治療中止された症例は13%と4%で報告された。

キュート先生の視点

EGFRエクソン20挿入変異のある非小細胞肺がんに朗報です。以前から学会などで注目されていたアミバンタマブの第1相試験の結果がJCO誌に報告されました。

EGFRエクソン20挿入変異はEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)の効果が薄いことが以前から分かっておりました。

第2世代EGFR-TKIやオシメルチニブによる検討がなされてきましたが、結果は振るわずに化学療法の方が良好な結果が示された報告もあります。

今回はEGFR/MET二重特異性抗体で免疫活性のある「アミバンタマブ」の用量決定と奏功率を見た第1相試験の結果です。EGFRエクソン20挿入変異の方で、いまかいまかと待ち望んでいる方が全国にいらっしゃるかと思っています。今後できる限り早くに第2相試験の結果が判明して実臨床で活かせるようになることを願います。

【CheckMate743】待っていました!悪性胸膜中皮腫の1次治療にもニボイピ!

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『First-line nivolumab plus ipilimumab in unresectable malignant pleural mesothelioma (CheckMate 743): a multicentre, randomised, open-label, phase 3 trial』(Lancet 2021;397:375)より

まとめ

悪性胸膜中皮腫の1次治療としてニボルマブ+イピリムマブ療法はプラチナ併用化学療法に比較して有意に全生存を延長した。

要約

〇悪性胸膜中皮腫に対する承認された全身治療で生存に寄与する化学療法のレジメンは限られている。

〇非小細胞肺癌の1次治療を含む他癌腫においてニボルマブ+イピリムマブ療法が臨床的に効果を示している。

〇このレジメンが悪性胸膜中皮腫の生存を改善するだろうと仮説を立てた。

〇本研究『CheckMate743試験』はオープンラベル、無作為化、第3相試験であり、21の国の103の病院で行われた。

〇18歳以上、過去に未治療、組織学的に確定された悪性胸膜中皮腫でPS 0-1の症例が適合症例とされた。

〇症例は無作為に1:1で

 -ニボルマブ(3mg/kg、2週間毎)+イピリムマブ(1mg/kg、6週間毎)群

 -プラチナ+ペメトレキセド群

に振り分けられた。

〇主要評価項目は無作為化された全症例で評価された全生存とし、安全性は治療薬を少なくとも1回以上投与された全症例で評価された。

〇2016年11月~2018年4月までに713例が登録され、605例が無作為に

 -ニボルマブ+イピリムマブ群 303例

 -化学療法群 302例

に振り分けられた。

〇77%は男性、年齢の中央値は69歳であった。

〇中間解析時にフォローアップ期間の中央値は29.7カ月であり、ニボルマブ+イピリムマブ群が有意に化学療法群よりも生存期間が延長(18.1カ月 vs 14.1カ月、HR 0.74)した。

〇1年次の生存率は

 -ニボルマブ+イピリムマブ群 68%

 -化学療法群 58%

であり、2年次の生存率は

 -ニボルマブ+イピリムマブ群 41%

 -化学療法群 27%

であった。

〇グレード3-4の治療関連有害事象はニボルマブ+イピリムマブ群で30%、化学療法群で32%に報告された。

〇ニボルマブ+イピリムマブ群で3例が治療関連死となり、肺臓炎、脳炎、心不全であった。

キュート先生の視点

悪性胸膜中皮腫の1次治療にも「ニボイピ療法」が適応となりました。

悪性胸膜中皮腫に対する免疫治療は『MERIT試験』の結果から、本邦でも2次治療以降のニボルマブがすでに実臨床でも使われておりますが、1次治療での適応拡大は大変喜ばしいものと考えます。

特に全症例での全生存期間は1年経過時に68% vs 58%、2年経過時には41% vs 27%と通して差をつけておりますし、特筆すべきは肉腫型や二相型を含む非上皮型の組織型の場合にはさらに63% vs 32%、38% vs 8%と大きく化学療法群に差をつけていることが本文中から読み取れます。

悪性胸膜中皮腫の中でも肉腫型や二相型は、化学療法の効果があまり期待できない組織型として有名です。ですので対照群の効果が乏しいことで、よりこのニボイピ療法が光る結果となりました。

本研究ではPD-L1発現率をDako社の28-8アッセイを使用して1%をカットオフにしてサブグループ解析も行っておりますが、現在の実臨床では悪性胸膜中皮腫に対するPD-L1発現率の測定は承認されておりません。

もともと予後の悪い悪性胸膜中皮腫に新しい治療選択肢、しかも肉腫型や二相型に対する効果的な治療レジメンが承認されたことは大変喜ばしいことと考えて紹介致しました。

【note連載②】肺癌の検査① -組織型を明らかにしよう-

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新連載!第2章を公開しました

先月から日本医事新報社さんと協力してnoteで連載を開始しています。

『肺癌診療のキホン-研修医が知っておきたい診療のリアルワールド-』

という題名で肺癌の病態、診断、治療のことなど

かみ砕いて解説しています。

第1回目は『肺癌診療の基礎 -診断から治療まで-』

ということで実際の肺癌症例の紹介と

イメージしにくい実際の肺癌診療の現場をお伝えしました。

第2章では肺癌を診断するための検査、

特に組織型を決めるためにどのような検査を行うのか

組織から遺伝子変異やPD-L1発現率などをどのように調べていくのか

について説明しました。

ぜひ一度読んでみてください!

 

次回の第3章では「病期(ステージ)決定のための検査」

についてお話ししていく予定です。

連載はだいたい3週間ごとを予定しております。

内容は研修医に向けて書いておりますが、

肺癌診療に携わる医療者やコメディカルの方々、

患者さんや患者さんのご家族でも理解できるように書き進めています。

コメントや質問も適宜受け付けております。

これからも宜しくお願い致します。

リアルワールドデータ!2次治療以降オシメルチニブ投与後の間質性肺臓炎

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『Real-World Evaluation of Factors for Interstitial Lung Disease Incidence and Radiologic Characteristics in Patients With EGFR T790M– positive NSCLC Treated With Osimertinib in Japan』(JTO 2020;15:1893)より

まとめ

過去のニボルマブ投与歴や間質性肺炎のある症例に対するオシメルチニブ投与は間質性肺炎の発症に注意

要約

〇日本のリアルワールドデータにおいてEGFR陽性非小細胞肺がん症例に対する2次治療以降のオシメルチニブの投与によって間質性肺炎を引き起こした症例の特徴を調べた。

〇間質性肺炎を引き起こした画像検査を後ろ向きに解析した。

〇3578例のうち、245例(6.8%)、252回の間質性肺炎のイベントが報告された。

〇オシメルチニブ投与後に間質性肺炎が起こるまでの時間の中央値は63日(5-410日)。

〇間質性肺炎を起こした245例中29例(11.8%)で死亡との報告だった。

〇間質性肺炎の専門家委員会では3578例中231例(6.5%)で間質性肺炎だったとの評価だった。

過去のニボルマブによる治療歴(OR 2.84)と間質性肺炎の既往歴や現病歴(OR 3.51)はオシメルチニブ治療による間質性肺炎の発症と関連していた。

〇過去のニボルマブによる治療を受けていた症例において、オシメルチニブ投与前1か月以内にニボルマブを中止した症例が症例数も割合も高く、ニボルマブによる治療とオシメルチニブの投与の感覚が離れれば間質性肺炎の割合は減少する傾向にあった。

キュート先生の視点

これは肺癌の実臨床において大事な論文。

オシメルチニブの投与によって間質性肺炎を引き起こした症例の約10%は死亡の転帰を辿ってしまうことや、過去にニボルマブによる治療歴のある症例や間質性肺炎の既往のある症例がオシメルチニブの投与によって間質性肺炎を引き起こしてしまうことなどは実臨床でも大事な情報です。

特にニボルマブを含めた免疫治療投与中止後1か月でのオシメルチニブは注意が必要です。

EGFR遺伝子変異を含むドライバー変異陽性例に対する免疫治療はそもそもエビデンスが少なく、現場の臨床の先生の感覚的なところがあります。とはいえ、ドライバー変異陽性の肺癌症例に対して、肺がん治療のキードラッグであります免疫治療を投与しないわけにはいきません。

ドライバー変異陽性の症例では後治療になってもTKIの投与やリチャレンジを行うこともありますので、免疫治療の出番は最後の最後、2ndあたりに強力に1度だけ使って、後は殺細胞性抗癌剤とTKIで最後まで粘る、のような使い方になるのかな、と思っています。多くの先生のご意見をお待ちしております。