HER2陽性肺癌に対するトラスツズマブ
わたくしが連載していますエムスリーさんの「スペシャリストの視点」第2弾の紹介です。
トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ®)は抗HER2抗体としてのトラスツズマブとトポイソメラーゼI阻害薬のデルクステカンが結合した抗体薬物複合体です。HER2変異は非小細胞肺がんの約3%に認められる遺伝子異常となっています。今回、HER2陽性非小細胞肺がんに新たな治療選択肢として「DESTINY-Lung01試験」について紹介します。
○HER2陽性の非小細胞肺がん症例を対象としたT-DXdの効果を評価した多施設共同国際、第II相、単アーム、非盲検試験。
○過去に標準治療に対して抵抗性を示した転移性HER2陽性非小細胞肺がん91例について解析されました。
○主要評価項目は奏効率(ORR)、副次評価項目は奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)と安全性が評価されました。
○フォローアップ期間の中央値は13.1カ月(0.7-29.1カ月)です。
○患者背景は、年齢の中央値が60歳(29-88歳)、女性が66%、34%がアジア人。
○91例中33例(36%)で登録時に中枢神経系への転移を有していました。
○独立中央評価委員会の評価で主要評価項目であるORRは55%(95%CI:44-65%)でした。
○完全奏効(CR)が1例、部分奏効(PR)が49例。
○病勢コントロール率は92%であり、病勢が評価できなかった4例を除くと病勢進行(PD)判定の症例は91例中3例のみでした。
○PFS中央値は8.2カ月(95%CI:6.0-11.9カ月)
○OS中央値は17.8カ月(95%CI:13.8-22.1カ月)
○安全性のプロファイルは過去に行われた臨床試験での報告に一致。
○グレード3以上の治療関連有害事象は46%で認められ、最も頻度の高い有害事象は好中球減少(19%)でした。
○治療関連間質性肺疾患が26%に認められ。91例中2例で死亡に至った。
キュート先生の視点
この「DESTINY-Lung01試験」では、既治療非小細胞肺がんに対するトラスツズマブの高い奏効率、病勢コントロール率の結果が示されました。
HER2陽性非小細胞肺がんに対する奏効率は55%(CR 1%、PR 54%)、病勢コントロール率は92%と、既治療例に対する効果としては十分期待できる治療だと考えられます。
特にPDと評価された症例は91例中3例のみであり、高い病勢コントール率とともに低いPD率は、失敗の少ない治療と捉えることができます。
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