医療情報サイト「メディカルトリビューン」さんの連載「みんなで肺がん注目論文 徹底検証しちゃいました」の紹介です。この企画は肺がん診療に重要な論文を、第一線で活躍される先生方とわたくしキュート先生で徹底的に検証しよう、という内容になっています。
連載第7回目は論文の共同著者で神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科医長の池田 慧 先生に解説を頂きました。
IPF合併NSCLCに対するニンテダニブ上乗せ効果は?
Nintedanib plus chemotherapy for non-small cell lung cancer with IPF: a randomized phase 3 trial(Eur Respir J 2022;60:2200380)
特発性肺線維症IPFを合併する非小細胞肺がん症例で、
①20歳以上
②病期がⅢ~Ⅳ期または術後再発例
③全身状態(ECOG PS)が0~1
④化学療法が未施行
などの適格条件を満たした243例が対象。
化学療法+ニンテダニブ群(121例)と
化学療法単独群(122例)にランダムに割り付けられた。
化学療法は3週を1サイクルで
カルボプラチン(AUC 6、day 1)
+nab-パクリタキセル(100mg/m2、day1、8、15)
を4サイクル施行。
ニンテダニブは150mgを1日2回、連日投与し
化学療法4サイクル終了後もニンテダニブ単剤投与は継続。
無イベント生存期間EFSの中央値は、
化学療法単独群の11.8カ月
化学療法+ニンテダニブ群は14.6カ月
と両群に有意差は認められなかった。
奏効率(ORR)は、
化学療法単独群の56.0%
化学療法+ニンテダニブ群では69.0%
と有意に効果が高かった(P=0.040)。
無増悪生存期間PFS中央値は、
化学療法単独群の5.5カ月
化学療法+ニンテダニブ群は6.2カ月
と有意な延長を認めた(HR 0.68)。
注目すべきはORR、PFSいずれにおいてもニンテダニブを上乗せする群で有意差を付けて高い効果を示しており、効果の面では十分期待できる点です。
OSでは後治療の影響も受けてしまい全症例群では差を付けることができませんでしたが、非扁平上皮がんに限ればOSにおいても有意差を付けているため、症例を選べばよりニンテダニブの恩恵を受けられそうな結果が示されました。
後治療としてS-1が約40~50%で選択されておりますが、間質性肺炎のリスクが比較的高い免疫治療やドセタキセル、ペメトレキセドなども選択されていることが分かったこともこの研究の重要なことです。
間質性肺炎合併肺癌の治療は現在の肺癌診療においても重要な課題です。
ぜひ池田先生との徹底検証を
多くの肺癌診療に携わる医療者に読んで頂きたいと思っています