『Prediagnosis Smoking Cessation and Overall Survival Among Patients With Non–Small Cell Lung Cancer』(JAMA Netw Open 2023;6:e2311966)より
まとめ
肺癌診断前の禁煙が早ければ 肺癌の生存期間が延長する
要約
○肺癌は依然として世界の癌関連死亡の主要な原因となっています。
○非小細胞肺癌は肺癌症例全体の 85% を占め、喫煙はそのリスクと最も大きく関連の深い要因です。
○しかし診断前の禁煙からの年数や累積喫煙と、肺癌診断後の全生存期間との関連についてはほとんど分かっていません。
○肺癌サバイバーコホートから非小細胞肺癌患者の診断前の禁煙からの年数、累積喫煙パック・年と全生存の関連性を特徴付けることを目的としました。
○このコホート研究には1992年~2022年の間にマサチューセッツ総合病院のボストン肺癌生存コホートに登録された非小細胞肺癌症例が含まれました。
○患者の喫煙歴とベースラインの臨床病理学的特徴は、アンケートを通じて前向きに収集され、肺癌診断後の全生存は定期的に更新されました。
○肺癌診断前の喫煙期間をExposureとし、主要評価項目は詳細な喫煙歴と肺癌診断後の全生存との関係としました。
○非小細胞肺癌症例5594人で
-平均年齢 65.6歳
-男性 2987人 [53.4%]
-795人 (14.2%) 非喫煙者
-3308人 (59.1%) 元喫煙者
-1491人 (26.7%) 現喫煙者
○Cox回帰分析では、非喫煙者と比べた死亡率は
-元喫煙者で26%高く (ハザード比 1.26、p<0.001)
-現喫煙者で68%高い (ハザード比 1.68、p<0.001)
○肺癌診断前の禁煙からの年数は、喫煙経験者の死亡率の有意な低下と関連していました (ハザード比 0.96、p=0.003) 。
○診断時の臨床病期で層別化すると、病気が早期の症例では、喫煙経験者で全生存がさらに短いことが明らかでした。
○早期の禁煙は、肺癌診断後の死亡率の低下と関連し、喫煙歴と全生存の関係は診断時の臨床病期で異なる可能性があります。
○肺癌診断後の喫煙歴に関連する治療レジメンと有効性が異なる可能性が示唆されます。
○肺癌の予後や治療法の選択を改善するため、詳細な喫煙歴の聴取は重要です。
キュート先生の視点
喫煙が肺癌発症の重要な原因であることは誰でも知っています。ただ予後にこれほどまで関連していることは知られていません。特に早期肺癌の症例では喫煙が予後に大きく関係しています。
呼吸器内科医として禁煙を勧めることは大切ですが、COPDなどでまだ肺癌発症に至っていない症例では、より強く禁煙して頂くよう心がけ、実臨床でも働きかけることが重要です。