『Osimertinib Improves Overall Survival in Patients With EGFR-Mutated NSCLC With Leptomeningeal Metastases Regardless of T790M Mutational Status』(J Thorac Oncol. 2020 Jul 9;S1556-0864(20)30505-0)より
まとめ
- 癌性髄膜炎を併発するEGFR陽性非小細胞肺癌においてオシメルチニブでの治療を受けた患者群での全生存期間の中央値は17.0カ月
要約
〇オシメルチニブは脳血液関門BBBを効果的に透過する第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)である。
〇2008年から2019年までに細胞診で癌性髄膜炎が確定したEGFR陽性非小細胞肺癌症例を後ろ向きに調査した。
〇癌性髄膜炎を併発したEGFR陽性非小細胞肺癌症例351例の癌性髄膜炎診断時から死亡までの全生存期間の中央値は8.1カ月。
〇T790M耐性遺伝子変異は検査された197例中88例で検出された。
〇癌性髄膜炎診断後、351例中110例でオシメルチニブで治療が行われた。
〇T790M耐性遺伝子変異の有無では全生存期間の差は認めなかった。
〇オシメルチニブで治療を受けた群110例での癌性髄膜炎診断後の生存期間の中央値は17.0カ月なのに対し、オシメルチニブで治療を受けなかった群241例での生存期間は5.5カ月だった。
〇オシメルチニブで治療されなかったが第1,2世代EGFR-TKIで治療を受けた症例108例での生存期間は8.7カ月だった。
キュート先生の視点
一般的に肺癌に併発する癌性髄膜炎は致命的な合併症として有名です。全身化学療法のほかに、髄注療法、放射線療法、ステロイドなどで治療されることがありますが、効果があったとする報告は限定的です。
今回は韓国からの報告で10年以上にわたり351例を集積しての後ろ向き解析です。特にEGFR陽性非小細胞肺癌ではEGFR-TKIが癌性髄膜炎に対しても効果を示すことがありますが、特に第1,2世代EGFR-TKIよりも第3世代のオシメルチニブによる治療が効果的であることが分かります。
裏を返せばオシメルチニブで治療ができなかった症例やEGFRが陰性であった場合には依然として予後が期待できない合併症であることが言えます。
本研究でもオシメルチニブ治療群でオシメルチニブ以外の治療として45%が髄注療法、34%が全脳照射、30%がVPシャント、28%が全身的化学療法、5%がオシメルチニブによる治療後に免疫治療がなされています。
オシメルチニブで治療がなされなかった241例でも64%が髄注療法、32%が全脳照射、34%がVPシャント、27%が局所治療、21%が全身化学療法、53%が他のEGFR-TKI、1例のみが免疫治療が行われた。
後ろ向き解析であり、オシメルチニブ治療群でPS2以上の症例は24%であるのに対し、オシメルチニブが入らなかった症例は33%とやや元気さのなかった症例が多く含まれますが、やはりオシメルチニブで治療がなされていることが大事であるものと考えられます。