キュート先生の『肺癌勉強会』

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【WJOG8715L】EGFR T790M変異陽性肺がんに対するオシメルチニブ+ベバシズマブ併用療法の第2相試験

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『Efficacy of Osimertinib Plus Bevacizumab vs Osimertinib in Patients With EGFR T790M–Mutated Non–Small Cell Lung Cancer Previously Treated With Epidermal Growth Factor Receptor–Tyrosine Kinase Inhibitor West Japan Oncology Group 8715L Phase 2 Randomized Clinical Trial』(JAMA Oncol 2021, published Jan. 7)より

まとめ

  • EGFR T790M陽性非小細胞肺がんに対するオシメルチニブ+ベバシズマブ併用療法はオシメルチニブ単剤とPFS、TTFで差をつけられず。

要約

〇EGFR陽性非小細胞肺がんに対して第1世代EGFR-TKIと血管新生阻害薬の併用はその効果が期待されているが、最近の単アーム試験からはオシメルチニブ+血管新生阻害薬は相乗的に作用しないのではと懸念されている。

〇EGFR T790M変異を持つ肺腺癌症例に対して、オシメルチニブ単剤治療と比較してオシメルチニブ+ベバシズマブの効果と安全性を調べることを目的とした。

〇先行するEGFR-TKIで治療後に病勢進行した進行非小細胞肺がんの症例で、T790M耐性変異を獲得した症例を登録した。

〇本研究は6症例でリードインパートと第2相試験パートとなっている。

〇第2相試験では症例は1:1の割合でオシメルチニブ+ベバシズマブ併用群かオシメルチニブ群にランダムに振り分けられた。

〇オシメルチニブ 80mg/日とベバシズマブは3週毎に15mg/kgで投与された。

〇主要評価項目は調査者評価の無増悪生存期間PFSとし、副次評価項目は奏効率、治療成功期間TTF、全生存、安全性とした。

〇87例が登録され、6例がリードインパート、81例が第2相に組み込まれた。

〇年齢の中央値は68歳(41-82歳)、33例(41%)が男性、37例(46%)がECOG-PS 0、21例(26%)が脳転移を伴っていた。

〇奏効率は

 -オシメルチニブ+ベバシズマブ群 68%

 -オシメルチニブ単剤群 54%

と併用群が良好であったが、無増悪生存期間PFSは

 -オシメルチニブ+ベバシズマブ群 9.4カ月

  -オシメルチニブ単剤群 13.5カ月

でHR 1.44、80%CI:1.00-2.08、p=0.20と併用群の期間が延長しなかった。

〇治療成功期間TTFも併用療法群が短かった(8.4カ月 vs 11.2カ月、p=0.12)。

〇全生存期間OSも差を認めなかった(未到達 vs 22.1カ月、p=0.96)。

〇併用群の主要なグレード3以上の有害事象は蛋白尿 23%、高血圧 20%だった。

キュート先生の視点

またよく考えてコメントしたいと考えていますが、先日の第1/2相試験ではオシメルチニブとベバシズマブの併用での1年無増悪生存率が76%であったとの報告でした。

第1世代EGFR-TKIに対する血管新生阻害薬の上乗せ効果は目に見える結果でしたが、オシメルチニブは単剤でも効果が十分に認められることからベバシズマブの上乗せ効果が乏しくなってしまうのかな・・・と個人的に考えております。ただ血管新生阻害薬が活かせるような、脳浮腫の強い症例や胸水が貯留している症例に対する症例毎の適応はあるのかなとも思っています。

赤松先生、ご報告ありがとうございました。

▼筆頭著者である赤松先生が編集に関わっている『肺癌診療 虎の巻』です▼