医療情報サイト「メディカルトリビューン」さんの連載「みんなで肺がん注目論文 徹底検証しちゃいました」の紹介です。この企画は肺がん診療に重要な論文を、第一線で活躍される先生方とわたくしキュート先生で徹底的に検証しよう、という内容になっています。
連載第8回目は論文の共同著者で神奈川県立がんセンター呼吸器外科部長の伊藤 宏之 先生に解説を頂きました。
術前ニボルマブ+化学療法が著効
Neoadjuvant Nivolumab plus Chemotherapy in Resectable Lung Cancer(NEJM 2022;386:1973)
切除可能な非小細胞肺がんの術前療法として、
ニボルマブ+化学療法の有効性および安全性を
評価した『CheckMate816試験』
本研究の対象は、
①ⅠB(腫瘍径4cm以上)~ⅢA期の切除可能NSCLCと診断
②がん治療としての前治療歴がない
③全身状態(ECOG PS)が0~1
④EGFR変異・ALK融合遺伝子が認められていない
などの条件を満たした症例群。
358例を術前療法としての
プラチナ併用化学療法+ニボルマブ360mgを併用する
ニボルマブ併用群(179例)と
化学療法単独群(179例)に1:1でランダムに割り付けた。
治療後6週以内に切除術を施行した。
無イベント生存期間EFS中央値は
化学療法単独群 20.8カ月
ニボルマブ併用群 31.6カ月
と有意な延長を認めた。
病理学的完全奏功pCRは
化学療法単独群 2.2%(4/179例)
ニボルマブ併用群 24.0%(43/179例)
と21.6%ポイントの差が示された。
切除可能非小細胞肺がんに対して術前化学療法にニボルマブを上乗せする治療、通称「術前ニボケモ」の効果を検証した試験の紹介です。
結果は主要評価項目である無イベント生存期間EFSを有意に延長し、病理学的完全奏効pCRも有意に改善しました。科学的な表現ではありませんが、圧倒的な差です。
免疫治療では免疫関連有害事象という特殊な副作用に注意が必要ですが、今回は3サイクルという短い期間でのニボルマブですので汎用性が高い治療法と捉えることができます。現に同試験でも有害事象のプロファイルは化学療法単独群と大きな差を認めていません。
今年2023年は肺がんの周術期治療が重要視されています。
ぜひ呼吸器外科の伊藤先生との徹底検証を
多くの肺癌診療に携わる医療者に読んで頂きたいと思っています。