『Erlotinib plus bevacizumab versus erlotinib alone in patients with EGFR-positive advanced non-squamous non-small-cell lung cancer (NEJ026): interim analysis of an open-label, randomised, multicentre, phase 3 trial』(Lancet Oncol 2019;20:625)より
まとめ
- 未治療進行EGFR陽性非小細胞肺癌に対しエルロチニブ+ベバシズマブ併用療法の無増悪生存期間は16.9カ月
要約
〇EGFR陽性非小細胞肺癌での1次治療で第1,2世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)での治療開始1年程度で多くの症例で耐性を獲得する(効かなくなる)ことが知られている。
〇第2相試験である『JO25567試験』ではEGFR陽性非小細胞肺癌に対し、エルロチニブ単剤治療よりもエルロチニブ+ベバシズマブ併用療法が抗腫瘍効果も高く、毒性も管理可能であることが示された。
〇今回この結果を受けて第3相試験である『NEJ026試験』が行われた。
〇『NEJ026試験』はオープンラベル、無作為化、第3相試験。
〇日本の69施設から登録された。
〇未治療のステージIIIB/IV期のEGFR陽性非小細胞肺癌症例228例が登録され、
-エルロチニブ+ベバシズマブ群 114例
-エルロチニブ単剤群 114例
に無作為に振り分けられた。
〇フォローアップ期間の中央値は12.4カ月。
〇主要評価項目である無増悪生存期間PFSは
-エルロチニブ+ベバシズマブ群:16.9カ月(95%CI:14.2-21.0カ月)
-エルロチニブ単剤群:13.3カ月(95%CI:11.1-15.3カ月)
でHR 0.605(95%CI:0.417-0.877、p=0.016)であった。
〇グレード3以上の有害事象は
-エルロチニブ+ベバシズマブ群:88%
-エルロチニブ単剤群:46%
であり、最も頻度の高い有害事象は皮疹 21%であった。
〇治療関連死亡は認められなかった。
キュート先生の視点
先日行われた『ASCO20 Virtual』で全生存OSの結果も発表されておりますが、フォローアップ期間中央値が39.2カ月で
-エルロチニブ+ベバシズマブ群:50.7カ月
-エルロチニブ単剤群:46.2カ月
との結果でした。Lancet Oncology誌に掲載された主要評価項目はPFSであり、実際の論文のFigureを見て頂けると分かりますが、PFSのカプランマイヤー曲線は概ね併用群で上を走っており、各種項目でのサブグループ解析でも併用群に優位な結果となっております。
EGFR-TKI+血管新生阻害薬というと、エルロチニブ+ラムシルマブ併用療法の『RELAY試験』、また先日JAMA Oncology誌に掲載されたオシメルチニブ+ベバシズマブ併用療法の第1,2相試験が頭に浮かびます。患者背景が異なりますので、単純にPFSの比較はできませんがエルロチニブ+ラムシルマブのPFS中央値は19.4カ月、オシメルチニブ+ベバシズマブのPFS中央値は19カ月となっております。
EGFR陽性非小細胞肺癌における臨床試験ではPFSで差がついても、OSで差がつきにくくなってきています。いずれの群でもOSがかなり延長していることや、第3世代EGFR-TKIの登場、後治療でのEGFR-TKI再投与などでOSをそこそこ延ばすことができるからではないかと考えています。
EGFR陽性肺がん症例において、実臨床でもやはりここぞという状況においては血管新生阻害薬との併用療法が活きるのではと考えられます。特に脳転移や胸水などの体腔液が目立つ症例には是非検討されたいレジメンです。