キュート先生の『肺癌勉強会』

肺癌に関連するニュースや研究結果、日常臨床の実際などわかりやすく紹介

【動画】 ESMO2022 呼吸器領域注目の8演題(Medical Tribune寄稿動画より)

肺癌, 肺癌勉強会, メディカルトリビューン, ESMO, MedicalTribune

※この記事はMedical Tribune内の『Oncology Tribune』に寄稿した動画の紹介です。

ESMO 2022 呼吸器領域注目の8演題

今回は先日開催されました欧州臨床腫瘍学会(ESMO2022)から、実臨床でいますぐ活用できそうな肺がん関連演題を8つ短時間で紹介します。

 

まずはいま注目されている周術期の話題から3演題。

■LBA47 / ADAURA

・IB-IIIA期の切除後アジュバントのオシメルチニブの効果を見た第Ⅲ相試験のアップデート解析。
・Primary endpointの病理病期II-IIIA期でのDFS無病生存期間の中央値は65.8カ月 vs 21.9カ月でHR 0.23と大きな差が認められた。
・注意が必要なことはオシメルチニブ3年間完遂時の3年DFS率が84%であるのに対し、4年DFS率が70%となっている。オシメルチニブを止めた後1年の間に再発する群が一定数認められることの証左と考える。
・サブグループ解析ではIIIA期の方が、IB期よりも術後オシメルチニブの恩恵が大きいことは既存の報告と同様。


■930MO / PEARLS/KENOTE-091

・IB-IIIA期の切除後アジュバント治療としてケモ±ペムブロリズマブの効果を見た第Ⅲ相試験。
・PD-L1高発現群では3年DFS率65.9% vs 57.6%とぺムブロリズマブの上乗せ効果が高い。ただプラセボ群でも低発現群や未発現群に比べてDFSの結果が良好であったことは注意が必要。
・PD-L1高発現群でのDFSのHR 0.82なのに対し、低発現群  HR 0.67、未発現群 HR 0.78であることを考えると術後のぺムブロリズマブの上乗せ効果は思ったよりも限定的。


■931MO/ JIPANG

・肺がん切除後のNon-Sqに対するアジュバント治療としてのCDDP+PEM vs CDDP+VNRを比較した第Ⅲ相試験。
・Primary endpointの無再発生存期間RFSは37.5カ月 vs43.3カ月で差を認めなかった。
・両群の3年次のOSも5年次のOSも数字上は大差ないのでPEMなのかVNRなのかはアジュバント治療としては大きな問題ではなさそうです。

 

 

つぎはドライバー変異の話題から3演題。


■990P / OCEAN

・放射線照射未治療の脳転移のあるEGFR陽性非小細胞肺癌に対するオシメルチニブの効果を評価した第2相試験。
・主要評価項目である脳転移に対する奏効率は76.9%。
・本試験での脳転移におけるPFS中央値が22.0カ月、OS中央値が23.7カ月で、EGFR陽性肺癌で脳転移がいかに予後に直結し、脳転移のコントロールが重要かが分かる。


■982P / WJOG9717L

・EGFR陽性非小細胞肺癌に対しオシメルチニブとベバシズマブの併用での効果をみた第2相試験。
・主要評価項目のPFSはオシメルチニブ+BEV vs オシメルチニブ単剤で22.1カ月 vs 20.2カ月と差は認めず。
・過去に本邦で行われた『WJOG8715L試験』(JAMA Oncol 2021)でもT790M陽性肺癌に対するオシメルチニブ+ベバシズマブは良好な結果を残せなかった。
・なにかオシメ+ベバは相性が悪いというか、対照群のオシメ単剤がEGFR陽性進行肺がん症例に対しては高い効果を示しているというか、オシメ単剤の効果を高める治療は今後の『FLAURA2試験』でのオシメ+プラチナ併用化学療法の効果の結果に期待したい。


■LBA11 / CodeBreaK200

・KRAS G12C陽性非小細胞肺癌の2次治療以降においてソトラシブ vs ドセタキセルの効果の効果について評価した第3相試験
・以前に報告された単アームの第2相試験である『CodeBreaK100試験』(NEJM 2021)ではソトラシブの奏効率が37%と報告。
・今回は全例2次治療以降で奏効率は28.1%で、PFS中央値 5.6カ月、HR 0.66とドセタキセルに比べて有意差あり。
・今後、KRAS G12C変異陽性肺癌の治療戦略にはソトラシブが活用されるべき。しかも効果の面からもドセタキセルよりもフロントラインでソトラシブが選択されるべきと考える。

 

 

その他の話題として2演題を紹介します。


■LBA11 / IPSOS

・高齢またはPS不良な進行NSCLCに対するアテゾリズマブ単剤とケモ単剤を比較した第3相試験。
・主要評価項目のOS中央値は 10.3カ月 vs 9.2カ月、アテゾリズマブ単剤がHR 0.78で良好な結果。
・2年OS率では24.3% vs 12.4%とおよそ倍の違い。


■1025P / DRAGON/WJOG9416L

・75歳以上の高齢者に対するDOC+RAM+予防的ペグフィルグラスチム(ジーラスタ)の有効性と安全性を評価した第2相試験
・54例での解析で主要評価項目RR 38.9%。
・発熱性好中球減少症FNの発症率は1.9%で、予防的ペグフィルグラスチムを使用することで高齢者においても高率にFNを抑える。

 

 

長くなりましたが今年の『ESMO2022』から実臨床に活用されそうな8つの演題を紹介しました。明日からの肺癌診療の一助になることを願っています。