医師向け薬剤比較アプリ『イシヤク』内の肺癌トピックに寄稿した記事を紹介します。
Osimertinib as first-line treatment for advanced epidermal growth factor receptor mutation-positive non-small-cell lung cancer in a real-world setting (OSI-FACT)(Eur J Cancer 2021;159:144)
EGFR陽性非小細胞肺癌の1次治療としてオシメルチニブが選択されていることでしょう。その理由の一つに、EGFR陽性非小細胞肺癌に対するオシメルチニブが第1世代EGFR-TKIと比較した『FLAURA試験』(NEJM 2018;378:113)においてPFSで大きな差をつけたという頑強なデータがあるからです。
『FLAURA試験』では第3世代EGFR-TKIであるオシメルチニブと第1世代EGFR-TKIであるゲフィチニブ、エルロチニブが比較検討され、PFS中央値18.9カ月 vs 10.2カ月(HR 0.46)と大きな差をつけてオシメルチニブの良好な結果が示されました。
ただ、このような大規模臨床試験やランダム化比較試験(RCT)は、エビデンスレベルも高く、集められたデータとしてはとても信頼度が高いものです。もちろん実臨床においてRCTが実際の肺癌患者さんの治療に活用されますが組み入れる適合基準が目の前の症例に合致するかはよく考える必要があります。
そこで最近注目されているのが「リアルワールドエビデンス(RWE)」です。RWEではRCTに基づいて築きあげられた標準治療をもとに、実臨床での多様な患者群を対象にした治療効果や安全性が含まれます。
先日、EGFR陽性非小細胞肺癌に対する1次治療としてのオシメルチニブのRWEである『OSI-FACT試験』の結果が報告されました。
本研究は本邦において2018年8月~2019年12月までに1次治療においてタグリッソで治療を開始した538例の後ろ向き研究になります。『FLAURA試験』では除外されていたようなuncommon mutations(マイナー変異)も5.5%、PS2以上の状態が悪い症例も16.2%含まれており、このあたりがRWEとして重要なデータと捉えることができます。
『OSI-FACT試験』での主要評価項目であるPFS中央値は20.5カ月と、『FLAURA試験』での18.9カ月と比較しても遜色ない結果が得られました。
RWEはデータの信頼性が低いと捉えることもありますが、実臨床での多様な患者群に対応する重要なエビデンスとして、RCTを補完する意味でも柔軟に参考にされたい本邦発の重要な論文として紹介しました。
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